よろしく頼むとばかりに、片手をあげて

「あぁ、そういう事か…なるほどな。
実践以外に話を聞くのも大事か、自分一人じゃ見落としがあるかもしれねぇし。
…そういや会心の一撃の手応えが少し変わったような気がしたな。理が変わる、か…
『目当てのエンブリオと遭遇したと思ったが気のせいだった』とかはしょっちゅう聞くが
そういう一時的な幻覚症状もこの世界の理の一部ってヤツなのかね？」

「自分の力じゃねぇってのは…ホラ、アレだ、俺達の"強さ"の源はエンブリオの力が
ほぼ大半を占めてるっつう話じゃねえか。契約を交わしたエンブリオへの生命エネルギーの
譲渡量に応じた見返りとして、連中と渡り合えるだけの能力と技術を授かってるってな。
…自分の腕がある程度反映されちゃいるが、武器の熟練度にしても似たようなモンだろ？そういう意味さ」

「壁にしても技術で補強しねぇと一撃耐えるかどうかって感じだが、その隙を突けるなら有用か。
他の奴らの話を小耳に挟んだ程度だが、後方支援の方が役に立つっちゃあ聞いてるぜ。
あとアイツら、生命エネルギーを注ぎ込めば注ぎ込んだだけ強くなってはくれるんだが
具現化に必要な気力も増えていくのがな…気力充填の方法を確保しておかねぇとちとキツいか」

「ふーん、やっぱ器用貧乏になっちまうし両立は難しいってのが大方の意見なのか。
換装した時期にもよるが、一揆が始まってすぐ鞍替えしたんなら今のままでいいかもしれねぇな。
装備種別毎の特徴を活かせる機会…いや、活かさにゃならねぇ機会ってのは
単独ならともかく集団行動じゃそうそうありゃしねぇだろうしよ」

「戦いは数だってどっかのお偉いさんも言ってるしな。それが正解に最も近いんだろう。
…契約したエンブリオによって得手不得手があるようだが、姉ちゃんは一点特化型か？
一人旅なら万能型にして死角を補うと安定しやすいっちゃあ言うが…
姉ちゃんはその辺もキッチリ考えて契約してるだろうから釈迦に説法かね」

「俺ァ団体行動は侵攻に影響の出ねぇ闘技大会だけで十分だな、アレは気楽でいい。
上位陣は本気になってるようだが…そのやる気を王城側に向けてとっとと終わらせて欲しいモンだぜ」

「内容は言えねぇが、一揆に直接関係の無ぇ仕事を請け負ってる。
…儲けが出なけりゃこんな面倒事にゃ首突っ込まねぇよ。何日拘束されるかも分かんねぇんだぜ？
ま、尤もらしい事を言いはしたが…結局のところは自分がそうしたいだけ、自分が決めたルールを遵守してるだけだ」

「装備品にしても素材に秘められた力は残ってるからな、有効活用するに越した事は無ぇ。
…ところで、合成するのはいいが…合成品、ありゃあ一体何なんだ？
何をどうすりゃ卓袱台やらバカでかい丸太やらができるんだか…サッパリ分かんねぇよ。
術者によって合成法は違うみてぇだが、材料が同格なら同じモノができるみてぇだしな…」

「ああ。同じ過ちを繰り返すようじゃあ話にならねぇが、学習してナンボだからな。
経験、成長っつうのはそういう事なんだろう…一発で取り返しの付かない事態に陥るってのは稀だしよ」

「…あ、そうだ。聞いたぜ？ここいらじゃ有名な人狩り集団…メル…メルナビネクスト？
だったか何だかの一派を打ち負かしたって、話題になってたぞ。やっぱ姉ちゃん強えぇんだな…」

相手の姿を認めれば、片方の手は武器を取り出し、もう片方の手でサングラスの位置を調整し始める