—　弱肉強食　—　[SummerVacation]：夜


まあるいお月様がぽっかりと浮かんでる夜
その月明かりの側で立っているギルくんがふとこちらを見た。
普段結ばない髪を軽く結ってるせいか
よくそのお顔が見える。


「あ、シュリザさん、浴衣…。」
「そう！浴衣、マハちゃんとね、着てみたんだよ？どう？どうどう？」


ずいっと顔を寄せて、くるりと回ってみせると、ギルくんは穏やかな表情で、
「そんなくるくる回ってたら着崩れますよ？」と笑った。

その時ふと、ギルくんが私の頬に手を寄せた

「え…　　　え！ええ！？」


「・・・？」


首を傾げるギルくん、無表情なくせに天然入ってるから
意味が分からない！

「あ、ああ、あの！ギルｋ「…シュリザさん、せっかくだからもう一工夫僕に付け加えさせてください。」
「…へ？？？」





「わああああ！これ、お化粧・・・！」
「夜空の下ですし、少し色を入れた方が…と思いました。」

小指につけた紅を拭き取り、
綺麗な紅を箱にしまうギルくんの仕草が
なんかとても艶っぽいなとかそんなことを考える。
ギルくんも浴衣着てるからかな？
ちょっと女の人ぽい（…）
あ、こんなこと言ったら怒られるよね、
綺麗って言いたいんだけどな。シュリザは…。
こういうとき、なんて言えばいいのかな。
うー・・・







「ねえねえ！見てホタル！！！」
「…うるさい、もう少し静かにできないの？」

外からは楽しそうにホタル狩りを楽しむみんなの声
チェリオくんとカネちゃんは甚平をスマートに着こなしてる！
あれこれ言い合ってるけど、実はとっても仲良しさんだとシュリザは思ってる。

そんな二人を余所にマハちゃんとブチくんは静かに１つ、２つと飛び交うホタルを見つめてる
黒地の浴衣と朱色の帯と凛としたマハちゃんの横顔、ほんとうに綺麗で、大人っぽくて…シュリザの方がお姉ちゃんなのに！驚愕！
（…

ブチくんはおめめをぱちぱちさせて、たまに手をあげてホタルを呼び寄せるような仕草

「へへ、ブチくん、ほらもう少し、高いところからみたらホタルに届くかもしれないよ？」
ふわふわと柔らかいブチくんを抱き上げながら
一緒にホタルを数える

「いーっぴき・・・　にーひき・・・」


ギルくんはみんなから少し離れた所で座ってホタルを見てる
何を考えてこのホタルを見てるんだろう


遠くの方からお囃子の音
お祭りで賑わう声


「ねえブチくん」
「？？？」
「シュリザ、今嬉しい気持ちでいっぱいなんだあ」

「だって、みんなとの夏の思い出がいっぱーいできたもの。」

「海行って、たくさん泳いで、お祭り行って、ホタル見て、浴衣着て…」

「たくさんのはじめてをみんなと一緒に体験できたから！」

「とっても嬉しいの！！」



そう呟くとブチくんはこくんと頷いてシュリザの手をぽんぽんと撫でた。




「おーーい！シュリちゃあーーーん、ブチーーーー！花火だよおお！みてーーー！」
「だからなんでそんないつも声がでかいんだよ！」
「あ、線香花火、落ちｔ…（耳しゅん）」
「マハさん、もう一本しますか？僕のあげますよ。」
「マハ、こんな人間からもらった線香花火なんてすぐ消えちゃうから、これあげるよ？お前は向こうで一人で線香花火しとけ、しっしっ」
「え、カネルさん、線香花火なんてどれもおな「うるさい！」


　…——　　一夏がもうすぐ終わる




———　[SummerVacation]　———

年若く見えたが、随分と落ち着いた物腰の相手だ
馴れ馴れしかったコチラに怒ることもなく話を聞いてくれた

二足自立のウサギを足の間に立たせ、釣竿を握る少年の傍に近づく。

目を細めると、2人の隣にしゃがみこんだ。