私はサラマンダー。エンブリオである。名前はない。ないはずだ。

近頃は大分力が戻ってきているのを感じる。
少しの時間外に出ることもできるようになってきたが、その姿は脆弱の一言で、漂う陽炎よりちょっとマシな程度の姿でしか発現できない。
宿主はそんな私を見て驚いていたようだ。が、これを私だと認識していないようだ。嘆かわしい。

あぁ前の宿主が懐かしい。奴はもっと我々の扱いに長けていたのだが、今のは全くなっていない。
もっとも、その術を教わることがなかったのだから仕方ないといえば仕方ないのだが…。


……しかし見栄を張りたいのか、私のことを自分の狐火であると吹聴するのはどうかと思うのだ。
何か知らせる方法はないものか。言葉を伝えるためには、まだ力が足りない。

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もふもふ。もふもふもふもふ。

そういって、はっと気づく

と言ってにじり寄る。

くるり、とターン。
恥ずかしいのか、君のほうに顔は向けずにそう言う。