※Eno.100の日記とリンクしています
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サクラ・エゾヤマ

　錬金術を学んでる１６歳の少女。
　卒業試験に挑みいろんな世界を渡り歩いている最中だったが、師であり初恋の相手でもあるレイヤ（Eno.459）が昔の錬金術の
　実験の影響でもう余命幾ばくもない事実を知り、卒業試験を放棄しレイヤの命を救う為の研究を行うと決心した。
　昼夜問わずに研究を続け、焦りも相まってサクラは心身共に疲労気味の様だ…
　今日はこの世界の大規模なイベントがあるらしい。
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「………。」

チラリととなりで雨宿りを共にしている相手を見る。
その表情からは喜怒哀楽が窺えない。

なぜなら。


彼はウサギの着ぐるみを着ているからだ。


─少し前。

夜祭で花火が打ち上げられると聞き、レイヤ先生やウルドを含めたあたし達は見に来ていた。
夜空を飾る大輪の花にあたし達は瞳を輝かせ楽しいひと時を過ごした。
だけど花火が終わり帰路へつこうかという頃、突然の雨に降られあたし達は走り出し…
雨宿りする場所を見つけた頃にはバラバラになっていたのだ。
そしてたまたま同じ場所で雨宿りすることを選んだ相手、それがこの人…ウサギ先生だった。

ウルドが初めて異世界に飛んできてしまった時に助けてくれたのがウサギ先生らしいこと、
それから何を師事しているかはよく知らないけれどカムイさんの先生であること、
あたしがウサギ先生について知っていることと言えば、そんな程度のものだった。

沈黙の時間が辛いけれど、まだ少し激しめの雨音がどうにかこの空間を助けてくれている。
あたしはその間に会話のネタは無いものかと思案を巡らせていた。
ここはやっぱりウルドの話題だろうか。
よし、ウルドとは普段どんなことを話しているのか聞いてみよう！

そう思ってくちを開きかけた時。

「サクラ。」
「は、はい！！！」

ウサギ先生があたしの名を呼んだ。

「鉄という素材があるだろう。」
「…え？は、はい、そうですね。よく使います。」

ウサギ先生の言葉を聞き、あたしは戸惑いながらも頷いた。
何か鉄に対して気になることでもあるのだろうか。

するとウサギ先生は空を少し見上げて、静かに語り始めた。


「熱くて柔らかいうちに打っておけばどんな形にでもなるが、形ができてしまってからでは違う形にすると脆くなったり、歪が残る。
　サクラや深雪はまだ炉の中にある鉄と同じで、形は見えないけどどんな姿でもなれる可能性を秘めている。
　形できるまでに思い悩む事で鍛えられるのだ。俺や兵庫のように歪な人間になるなよ。」


…。
……。
…………。


「あ、はい。」

思わずぽかんとしてしまったけれど、そう返事をするとウサギ先生は満足したように頷き再び二人の間には沈黙が訪れた。

…若干反応に困る内容だったけど、ウサギ先生なりに気を遣ってくれた…んだよね。

「あの、…ありがとうございます。今頂いた助言、忘れません。」

あたしがそう言うと、ウサギ先生はこちらを見ないまま「どうということはない」と呟いた。




あとでみんなと合流した時に、このことを知った灘さんにウサギ先生が殴られていたのは…

忘れようと思う。

（ハンカチで鼻を啜る）

髪の毛でもぞもぞと動き

埋もれていた兵庫さんの髪の毛をどや顔で自分の頭にのせてカツラのようにしている

徐に自分の頭をさわさわさわさわしだし

ユカラさんに己の頭部を見せている

サクラの言葉に熱心に耳を傾けている。