ミチエーリの発案により、一旦各チーム二手に分かれて探索を進める事となった。
　情報を整理し検討した結果、各チームからは砂地探索へ三名、水辺探索へ一名と分かれるのが良い配分だろうと結論付けられた。
　向こうのチームはどうとでもなるだろう。問題は、私の方だった。
　砂地の先には相応に強い相手が居るという。対して水辺には兵士のような者が居る……という情報がある。その兵士は、今日戦った彼らと大差ない練度だそうだ。
　とはいえ、その兵士とやらも、私達がそこへ行くまで居るかどうかは解らない。
　情報を鵜呑みにし、一人になった所で強力な敵性存在——混乱に乗じて人を襲う者も居るそうだ——に襲われる。これが考えられる限り最悪の状況だ。
　そのような状況で無事に撤退し、万一が起こってもチームへのダメージが少ない者が水辺へ行くべきだ。私はそう考えて。

「水辺へは私が行くよ。攻撃の手は弱いけれど治療の術も有るし、それに砂漠の先に待っているのはかなりの使い手なのだろう？」

　私の言葉に姉様は猛烈に反対したが、待ち受けている兵士であろう者は此処と大差無い事、新たに仕立てた服が思いの他強靭である事、傷を負っても癒す手段がある事、そして私が砂地へ行ってもおそらくは然程の貢献が出来ない事を説くと、渋々ながら納得してくれたようだった。


　そのような経緯を経て、私は今星屑の小川に居る。
　乾いた砂地から平原を経ての川辺はいかにも涼しそうで、人の目がなければ水浴びと洒落込みたいところだ。
　だがしかし、そうも行かない。目付け役を兼ねているのだろう、あちらのチームのミスター・サイが傍にいるし、何よりも先客が居たからだ。

　その先客たる男性は、どうやら前情報の兵士らしい。
　こちらの姿を認めると、防具も付けず傍らの武器を手に襲い掛かって来た。

マッスルポテトの残骸に齧りついた妹を、真顔で見つめる。

きっと僕は無事で帰って来られると、そう言葉をかけられてもチセの表情は曇ったままであった。
しかし、その小柄な自分よりもさらに小さな身体に抱き寄せられ、頬に彼女の唇が触れたとき、チセの心は少し、軽くなった。
けれど、それと引き換えに気が緩んだか、いままで必死で堪えていた涙がチセの頬を伝い落ちた。

そして、友の身体をぎゅっと抱きしめた後、チセは離れてゆく後姿を見送り、そのまましばらく立ち尽くしていた。

咳き込む相手を見て、”やれやれ”というジェスチャー。

ヒュー！と、口笛を鳴らす。