三度目の相手…最初に遭遇した隻眼の男性も含めれば四度目の相手たる兵士を退けた男ではあったが、淡々と身繕いをすませば後ろを振り返ることなく先へと進んでいく。

兵士「くそ・・・・・運のいいやつらめ・・・・・」

　怨嗟の如く、倒れた姿勢のままで水着姿の男が呟いていたが、その体勢では負け惜しみにしか聞こえない。その事を教えてあげようかとも思ったが、逆上されても面倒なのでスルーすることにした。
　そもそも何故兵士の男は防具も身につけず、こんな所にいたのだろうか？　水着の男が、水辺の近くで何かをしていた…となると、水浴びだろうことは容易に想像は出来る。出来るのではあるが、次いで浮かんだ感想を吐露してしまう位に、彼女は呆れていたのである。即ち…。

リコ「…無用心ね、色んな意味で」

　兵士が「休息を狙うとは卑怯なッ！！」とも息も絶え絶えな中、再度主張したりもしていたが、武器を取り、襲いかかってきた相手に、そこまで肝要になってやる義理はないので、やはり無視することにした。
　…と、視界の端に光の明滅が飛び込んできた。その明滅が徐々に早くなってきてる事に気がつけば、少女はまだ何やら不満そうに呟く兵士の相手も程ほどに急いで男の後を追うことにした。

　グラナ…自分が持ってきたネクターと呼ばれる紅い花の花びらを使って契約したエンブリオである所の所謂ピクシーと呼ばれる彼女は、正式には祖父であるレーヴェが主ではあるのだが、先に戦った事もあって、祖父より自分に懐いてきてる節があり、今もこうして自分を先導するように少し先を浮かんで光の明滅を繰り返している。グラナの先には大きな体躯を誇る白い狼の姿が見て取れる。


←　前　　　　　　　　　　　後　→
レーヴェ＞アンジェロ＞グラナ＞リコ


　図解に表すとこんな感じではある。グラナが加入した事で、アンジェロの負担が幾らか軽減出来ているようで、白狼が後ろを振り返る機会は減ってきている…と思う。思いたいだけかも知れないが、それでもこれ以上遅れてしまっては、追いつく事もままならなそうだったので、急いで追いかけることにした。
　何れにしても、自分は見届けなければいけない…それは、祖父を追いかけ始めた動機でもあり、役目だと思ったから。


　急いでとはいっても此方は少女の足であり、向こうは歴戦の傭兵…普通の感覚で言えば、追いつく事など不可能なものだが、それでも今度も追いつく事が出来たのは或いは気を使ってくれているのかも知れない。
　そんな些細な事ではあったが、少し…本当に少しの事ではあるが、祖父の気持ちを感じ取れた気がして不思議と嬉しい感情に包まれた。

　男が五度目に相対しているのは、金髪碧眼の女性だった。

　自分の銀髪を弄りながら、ふとそんなことを思う。
母親は金髪に並々ならぬ憧れを抱いていた…そのため、自分が母と同じく銀髪で生まれ出た時には、それは落胆したという。それを伝えた時の父の顔は、恐らく一生忘れる事は出来まい。

　そんな事を考えているうちにも戦いは終わりを迎え、今度も男が勝利していた。倒れ付した相手に今度も手を差し伸べる様子のない男に対し、少女はきっと戦力になると訴えて、どうにかそれを承諾させることに成功する。
　グラナの時とは違い、相手が使う技に興味を示していたとはいえ、それでも仲間に加える事が出来そうだと分かり、少女はほっと胸を撫で下ろす。

　そう思いながらも新たに参加することになったセイレーンに対し、彼女の名前を一緒に考えることになって、白狼とグラナも加わりワイワイやっているのを肩を竦めて見やる男の姿がそこにあった。。。

…自己紹介しつつ、傍らの白狼が気になる様子…

相手の姿を認めれば、片方の手は武器を取り出し、もう片方の手でサングラスの位置を調整し始める

相手が動かなくなったのを確認すれば、振り返る事無く踵を返して

サングラスの位置を微調整しながら、歩を進め

手に取って見やれば、それを無造作に背嚢へと放り込んで

相手の姿を認めれば、片方の手は武器を取り出し、もう片方の手でサングラスの位置を調整し始める

ハサミを鳴らしている

なぜかハサミを鳴らしている

相手の姿を認めれば、警戒した様子を隠そうともせずに剣呑な視線を送り