ENo.453 リロル＝エミネム

ゆめとうつつのおわりに、

津波がすべてを流し去ってゆく。

遠くの森に一瞬結界の様な光が灯るのを、どこか呆と見つめていた。

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海上に、二つの影が浮かんでいる。

「やれやれ、ね。」

「全くですね。最後までこのノリだとは大体予想出来ていましたが。」

白ワンピースの水着（白スク＋フリル）のリロルと、黒ビキニのマーガレットである。
浮き輪の穴に腰を落ち着ける形でぷかぷか浮いている二人は、しばらく無言で。

………

………………

………………………、

「いくのね。」

「はい。」

それは、あらかじめ決まっていた、終わり。

二人が出会って早600年。あの日から、すでに来ると決まっていた別れの刻。

「今までありがとう。マーガレット……いえ、ノーラ。」

「こちらこそ。リーヴェロル。月並みですが、幸せな日々でした。」

母の苦悩を知り、歴史を変えんと現在に渡り来た者。
その結末は、確かに変わった歴史の中で、自らが産まれる確立をゼロにしてしまったという物だった。
最後の希望を繋ぎに島へと来たが、父親は見つからずじまいで。

「マダム・ルクィは？」

「さぁ……あの人の事です。私の無事でも、祈っていたのではないでしょうか。」

それでも、青空を見上げるノーラの顔は晴れやかだった。
ならばこれで良かったのだと。
リロルも何を言うわけでもなく、空を見上げた。

暫くして、リロルが顔を戻したときには、

浮き輪がひとつと、彼女が後生大事に持っていた髪留めだけが浮いていた。

「………おやすみ。」

浮き輪を二つに重ねて、髪留めを手に取る。
暫くそれを見つめて、ため息と共に笑んで。
海水に遊んでいたポニーテールを引き上げてアップにし、髪留めで結わえる。

「彼女らしい最期、ですかな？」

「貴方らしい登場、としておくわ。」

「Exactly（その通りで御座います）」

ボーダー柄のレトロな水着に身を包んだウォルターと二人、軽く笑いあって。

「他の侍従たちを集めてきて頂戴。ワタシはベルナとミス・ヴィヴァニアを探すわ。」

「畏まりました。人造人間族の姫御は海底におられるか本国にお帰りになったかのどちらかでしょうが……」

「……見つからなかったらそれで良いわ。」

「了解、では。」

一礼すると海中に消えるウォルター。
それを見送って、ふと振り返ると……愛しい人の姿がやや遠くに映った。

「それでは、ワタクシ達も参りましょうか。」

「未来へ。」

-END-