ENo.102 檜

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ショウ＝エミリアの日記

100×年8月1×日

―今日は嫌な事があった。
凡そ山を一つ越えた先にある竜の里の竜に、私が竜を育てていることに気付かれてしまった。
いや、よく檜が7才になるまで気付かずにいられたのとも言えるのかも知れない。

竜からして見れば滑稽この上無いと思う。
例えば蛙が鮫の子供を育てているのと似ているだろう。それぐらい竜と私、人間とでは戦闘力に差がある。
さて、先程の鮫の例えの続きだが、もしこれを見た賢い鮫はどうするだろうか？
まず哂う姿が想像されるだろう。まぁ、こんな凄い子を育てて偉いわねーと取繕う鮫もいるかも知れないが、結局根本としては一緒だ。
その根本とは感情に疎い私にも気付く事が一つ。
優越感。
それを持つ事自体仕方の無いことだろう。生物は元々縄張り意識があってそこを入ろうとするモノには厳しい罰を与える。
下の立場にいるモノは決して相容れない、話を聴かないなど元凶の元ではないのだろうか。
そもそも思い違いなのだろうか？寧ろ思い違いであって欲しい。
それならば、私が狩りに行くたび悉く先の獲物を狩られるのに別の理由がついて助かる。

流石に連日のようにやられると食べられるモノが消えて困るし、少々腹が立つ。
そうやって収穫も無しに連日のように帰ってくるのだが檜は

「え？いや、食料も勿論大事だけど、そんなの関係無いじゃん。
　明日があるって！だから落ち込まないで」

檜もいつの間にこんなに成長していたのだろうか。
ありがとう、とぎゅっと抱きしめてしまった。
そして翌日、私にこんな事を言うのだ。

「お母さん、きっと最近疲れているんだよ
　顔色が少し怪しいもん。
　だからしばらくボクが狩りをする。」

そう言われ、狩りのコツとやり方を十二分に私から教わった檜を一人で森に送り込ませると

「見てよ！鹿2体焼いて仕留めたんだよ。
　これで今日の晩御飯困らないね！！」

と臓器を抜き、血抜きが済んだ子鹿の肉体を棒に串刺しにして持ってくる。
それも見事な焼け色に仕上げている。そのまま食べられそうだ。
というより、私は真っ先に獲物を先に奪い取る竜に遭遇されなくて良かった、と胸を撫で下ろした。
どうやらあの竜達に用があるのは私のようだ。
しかし、やはり思い返してみると自分の不甲斐無さに腹が立つ。
子供に気を使わせる親など親と言われる資格は無いだろう。
…檜には心配をかけさせたくない。
あの子にだけは決して…！

そんな事を思いながら檜が鹿を狩った時について興奮気味で話すのを聞き、その後は近くで取れる山菜、鹿二体を一緒に食べた。
その時、檜は普段は我侭ばかり言っていたのに関わらず私を気遣いながら話すようになっていた。
その一つ一つが私の心を打ち、私も只思考を巡らせるだけではなく行動しなければ、と思った。

まず檜に悟られないように竜の里に行こう。
話すことによって、交流をする事によって問題が解決されるかも知れない。
私のこの状況を言えば何かしてくれるかも知れない。
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