ENo.1604 エナ＝キークロップ

◆朝：マンモスは怖いです◆

エナ「ふひ〜・・・ひどい目に遭いました〜・・・」

そんなに苦戦はしなかったとはいえオルゼから旅立ってそれなりの距離を歩いてきたので疲れているところに
女盗賊さんが乗ったマンモスが追っかけてきたのです・・・
旅だった頃は全然見かけなかったのになんだかすごくびっくりしました。
こうも短期間で生態が変わるものです・・・

キュ「まぁ、でも敵じゃなかったといえるぐらいの差はあったじゃない」
エナ「それはそうなんですけどね〜」

キュークの言うとおり、戦力としては旅だった頃とは比べるべくもなく強くなっていて、
負ける要素などほぼないに等しい状態だったのでよかったのですが、
もし、同じような姿をした新種だったりしたらと思うと怖いです。

キュ「いきなりそんなのは現れないでしょ」
エナ「いえ、この世界を舐めてはいけません。本当に何が起こるのか分からないんですから」

わたしたちが元々住んでいた世界もたいがい訳の分からないことが起こったものですが、
この世界のわからなさ具合ったら追随を許しません。
他にもいろいろと世界をわたってきましたが、そのどの世界と比べてもすごくへんてこです。
当然へんてこが悪いというわけではなく、むしろへんてこな方がわたしとしては楽しいのでうれしいのですが、
ここまで予想が付かないと、何が起こっても驚かず、受け入れなきゃという気持ちがすごく強くなってきます。

キュ「マンモスの新種ね・・・牙が金色だったりするのかしら」
エナ「女盗賊さんは仮面をかぶったりするかもしれませんよ」

今回の敵がゴールデンマンモスとアマゾネスリーダーとかだったらもしかするとまけてしまっていたかもしれません。
なんか想像していると本当に次街から出たときに出てきそうな気になってくるので想像するのはやめておきましょう。
わたしたちだけならいいですが他の二人も巻き込んでしまいますからね。

◆昼：スティルフの街に戻ってきました◆

エナ「やぁっと、着きました〜♪」

オルゼから高速で東へ、そこから盗賊を撃破しつつ南下すること二日間。
やっと、街に着きました。
それもこの世界に来たときにいた街、スティルフです。
もうすでにいろいろと懐かしい感じがします。

キュ「今日はこれでゆっくりベッドで休めるわね」
エナ「はい♪しばらくキューク袋でしたからね〜お疲れ様です♪」

やはり、ふかふかのおふとんに自分で作らなくても出てくる料理はうれしいです。
いや、料理は好きですけどやっぱり眠たいときとかに作るのは面倒くさいですから、ね？
それが多少お金がかかるにしろ、自動で出てくることと言ったら、いいです。
ま〜・・・気に入らない味のものだったりしたら自分で無理にでも作りますけど、
とりあえず、この街にはそんな不貞な宿はないようなのでよかったです。

エナ「さてと、お買い物もしなくちゃですね」
キュ「今回買う予定のものは・・・ポーションばっかり？」
エナ「はい。またすぐ街を出て依頼をこなしつつオルゼに向かいますからね」

そうです。始めてきたときにすごく噂になっていた動く林檎さんの依頼がまだこなせていないのでまずはそこへ向かう予定なのですが・・・
どんな姿なんでしょう？やっぱり林檎に目と口が着いてて牙が生えてて宙に浮いていたりするのでしょうか？
この世界なら十分にあり得ますよね。
それとももっと奇抜な格好をしているのでしょうかね・・・
といってももうこの依頼をこなした人なんてこの街にはほとんどいらっしゃにないでしょうし、情報はなかなか集めにくそうですね。

エナ「次に寄るのはこれですね」
キュ「そうね、進行方向にあるわ」

今度はゾンビさんではなくゴーストさんらしいです。
ゴーストといえばとらえどころがなくふわふわしているイメージですので今のわたしの攻撃が通じるのかがすごく心配です。
通じなかった場合はお薬による回復に回ることに出もしましょうか

キュ「ん？なんで？攻撃が通じ中なら技で戦えばいいじゃない？」
エナ「それがそうも行かないみたいなんですよ」

どうやらこの世界では武器を扱うものの技は武器に、魔法を使うものは魔法にすべての技が変質してしまうようなのです。
もちろん例外はあると思いますが、わたしがこの世界で使える技はほとんどそれに該当してしまっています。
だからなんでしょう？魔法戦士！みたいになればいろいろと便利だったのかもしれませんが・・・
不器用なわたしには無理ですよね・・・はい。分かっていました。

キュ「そんな卑屈にならなくても。エナはエナでできることがあるじゃない、ね♪」
エナ「はい・・・それを頑張っていくことにします！」

◆昼過ぎ：ちょっと海岸線へ散歩◆

エナ「さーて、今日の分の探索頑張りますよ〜！」

街で一休みした後またもやいったん分かれて街の周りの探索に向かうことになりました。
わたしはまたからさらに東へ移動して海の方へと探しに行きました。
キレイな水平線です。

エナ「本当にキレイ・・・でも全くあっち側が見えないのは不安になりますね」
キュ「そうね〜・・・この世界はもしかすると球体じゃないのかもしれないわね」

球体じゃない。
そもそも今立っている大地が星、惑星の一部だと言うことも現状では断定できない状態です。
宇宙という概念がない可能性だってあります。
そして、どうやらもう一つの世界とすごく隣接しているらしいですし、
地図の端が世界の端であるという可能性すらありますね。
もしかするとこっち側の先には何もないのでしょうか。

エナ「なんかそう考えるとちょっと寂しくなりますね」
キュ「ん？ああ・・・そうね」

もし、船でも用意できることがあったら、この海を渡ってみたいかもとか思えてきました。
もしかしたらこの地図に載っていない新天地に着いちゃうかもしれませんし！
世界の端から転げ落ちるという可能性もありますが、それはそれでとても貴重な体験だと思うのです。

エナ「そんな感傷に浸っていても今は解決しようがないですから、何かめぼしいものがないか探しましょうか」

とはいえ、あたりを見渡すと出発地点が近かったからかあらかためぼしいものは拾われてしまっており、全然見つかりません。
小さな石なんか拾ってもおそらくここに来たときに持たされていた石とそうこうかは変わらないでしょう。
貝殻でもあれば多分違うのでしょうけど・・・

キュ「あ、エナ。これなんかどう？」

キュークが見つけてきたのはすごく平べったい石。
長い間水や風にさらされた石は丸くなるものですが、
変なあたり方をしたのか、それとも最近になって割れてしまったのか分かりませんが、
断面という断面の見つからないとても綺麗な石でした。

エナ「ん、今回はこれにしましょうか♪」
キュ「一応黒い石なんかも見つけたけど・・・」
エナ「おいておきましょう。まだまだ異世界からこの世界にやってきている人が大勢いるようですからね」

スティルフでおろおろとしている人を見かけると、ああ、わたしもここに来たときはそうだったな、と、思い返されるのでした。

◆夕方：今回のお薬の結果を検証◆

エナ「うーむ・・・」
キュ「うーん・・・」

二人してこの間できて今回使ってみたお薬を見つめてうなっています。
今までお薬は相手に投げるものが多かったため今回もそのたぐいであろうと思っていましたが、
どうやら体力を回復してくれることかを持つようでした。
が、その回復量が少ないのです。

エナ「やっぱり失敗作は失敗作なのかな〜・・・」
キュ「そうね〜・・・でも、もしかすると何か別に効果があるのかもしれないわよ？」

それは少し考えていたところでもあるのです。
偶然の産物とは言えここまで光り輝いてくれているお薬があれだけの効果とはとても思えないからです。
どう検証したらいいものか・・・

キュ「今回ぶっかけてダメだったんだから飲んでみるとか？」
エナ「戦闘中に全員に飲ませてる余裕なんかないですよ〜」

それでなくてもわたしは前衛でルニさんとは特に位置が離れているので難しいです。
今回のようにまき散らして当てるのが精一杯なのです。
縮地と組み合わせればもしかするともっと何かできるかもしれませんが・・・

キュ「それだ！エナ、次の戦闘では、縮地を使ってじっくり患部にぬってみなさい」
エナ「塗るんですか？結構維持しなくちゃいけないような・・・」

体当たりに使う分には本当にほぼインパクト瞬間だけなのでコンマ何秒の世界です。
なので今のわたしにも使えているわけですが、
薬を塗るとなると少なくとも2，3秒は欲しいところです。
そうなると今までの記録の5〜6倍も維持しなくてはいけなくなります。

キュ「そうね、そこは私も手伝うことにするわ」
エナ「大丈夫なのですか？」
キュ「ま〜・・・何とかなるでしょ」

とても不安ですが、塗る、ぐらいが今回よりも強く効かせるとしてぎりぎりのラインでしょう。
二人にはびっくりさせないよう断りを入れましょうね。

◆過去：生まれ育った図書館について◆

さて、今度はわたしが生まれ、人生の大半を過ごした図書館のお話です。

正式名称は世界統一図書館第七分館、通称はわたしの苗字でもあるキークロップ図書館。
世界統一図書館という名前の言うとおりわたしたちのいる世界のどこにでも分館ある不思議な図書館です。
本館もあるらしいですがわたしはまだ行ったことがないですし、場所も詳しくは知りません。
お母さんはさすがに何回か会議に行ってくると行っていったことはあるようですが、
危ないからとつれていってはくれませんでした。

蔵書の冊数は億とも兆とも
時間がたつにつれ勝手に増えたり減ったりしているようなので、
お母さんをしても正確な冊数は分からないようです。
もしかすると全部の分館本館がつながっていてお互いの在庫を出し入れしているのかもしれません。

外観は特に変わった様子もなく、少し背の高いレンが造りで、普通のよくある図書館という風貌です。
強いて変わったところをといえば、入り口が10個ぐらいあるほどに大きいことでしょうか。
魔法でお母さんは空間制御して広さを増やしていると言っていましたがそれでも限度があります。
なので、物理的に敷地と図書館内部の空間を増やしなんとか収まっている状態です。

そして、わたしのカバンはこの図書館とつながっています。
このカバンはわたしのお母さんの手作りで、ある意味キークロップ図書館分館みたいなものになっているのです。