ENo.1526 ベネデッタ・コーネル

― おてつだい　だいすき！ (2) ―

「ブー」

（以下、意訳）

　まー、何と言いやすかねえ。
　嬢ちゃんの子守も、わりかし大変な事でありましてねえ。

　あン子は、手前の性能を考えずに動きますからねえ。
　右へ行ったり、左へ行ったり、気まぐれで動きやがるもんでして。
　手綱握って修正してやりませんと、まあ何処に行くか判ったモンでは有りません。

　今日は今日で、先行きが全くみえねえ事態に陥っておりますわ。
　理由？　そんなモンは簡単でさァ――嬢ちゃんの、新しい手勢でございますよ。

ドデカライオンA「俺様ァ？　あっれー、見て判らないモノかな〜？
　　　　　　　七つの海を股に掛け、この名を告げれば泣く子も黙る、天下無敵の大海賊！
　　　　　　　海賊王バレッタ様に決まってるよ！」

ドデカライオンB「キシャァァァ！！」

「はぁい。よろしくねー！　バレッタにダンディ！」

　……とまあ、だいたいそんな感じでしてね。

　嬢ちゃんの事を心配する、あっしの心中など露ほども知らず。
　ベルの嬢ちゃんが従えたのは、そりゃもう、あっしに輪を掛けて不思議な奴らでしたわ。

　片や、自称海賊王。
　こう見えて、曲名は“女海賊バレッタ”っていうそうで。
　派手な衣装に、自信に満ちあふれた立ち振る舞い、絵に描いたような傾奇者ですわな。

　片や、巨大タンポポ。
　嬢ちゃん曰く、名を“空飛ぶダンディライオン”と言うそうで。
　ライオンで、噛み付いてくるからタンポポなのよー！　なんて、ワケの判らない事を言っておりますよ。

　まあ、あっしに言えるのは一つばかり。
　どっちも元々、同じドデカライオンとは思えねえ野郎どもですわ。

　嬢ちゃんの魔法は、歌と“異変で変貌した獣”の波長があっちまえば、後はどうでもいいようで。
　元は同じ獣でも、別々の歌を気に入っちまえば、こんなコトも起こるようで。
　何が原因でこうなっているかは判らねえが、本当、難儀な話ですわ。

　そんなワケだから、ふっと思う事が御座います。

　もしも波長さえ合う獣が見付かれば。
　今まで嬢ちゃんが弾いた、あっしのご同輩達も、またセルフォリーフに呼び出されるかもしれねえ。
　嬢ちゃんの願い通り、わいわいやってやれねえ事もねえかもしれねえ。
　――なーんて、そんなコトをね。

　あっしは古参の顔まではしりやせんが。
　事実、猫のダンナや、大鷹のダンナは、それを狙っているフシが見え隠れしましたわ。
　あンひと達にゃ、やらねばならねえ事が有るみてえですからねえ。
　それが、嬢ちゃんに利のある事かはわからねえのが、ちと気になりますか。
　ご苦労なこったとァ思いますがね。

　一方、クリオネのちびっ子はもう沢山だ！　ってェ感じでしたな。
　気がよええ子だからなァ。こっちはこっちで、仕方のねえコトですけどねえ。

　……あっし？
　あっしは、さァてどうだか。

　どちらにしろ、歌には終わりってえモンが有ります。
　人の人生と同じです。山有り谷有り、分かり易いモンでしょう？
　だから、あっしはココで仕舞いとさせて頂きましょう。

　新しいライオン共が、何を考えているかなんて、あっしにゃ想像も付きません。
　獣も歌もそれぞれで、尽くす者ありゃ、利用する者も御座います。
　アイツらがどちらかは知りませんが、判断するのも、騙されるのも、全部嬢ちゃんの責任でございます。
　たとえ、膝を付くことになったとて、差し伸べる手はございません。

　その時にゃあ、まあ……あっしには関わりのない話に、なっているでしょうからねえ。

（意訳、ここまで）