ENo.3416 ヴァンエッタ＝エルトリネーゼ

Vanetta's Diary - Page.8
周辺での依頼も大方終わらせてしまった事だし、
私たちはついに【スティルフ】を出発し森を越えて東の街【オルゼ】に向かうことになったわ。
ついで、と言ってはなんだけど、スティルフで受けられそうな依頼の最後の１つ、野盗討伐も一緒に片付ける事に。
出現するのは東の大樹海と、更にその北にある湖を迂回して続く街道みたい。
さすがに大樹海を突っ切る形の街道は通せなかったのね……まあ、仮にあったとしても、昨今の植物異常成長やらで使えなくなってたでしょうけど。
距離的には近いけど、樹海には凶悪な生物も生息していると言うし、依頼がなかったとしても早々使いたいルートじゃないわね。
そりゃ、いつかはそれぐらいの危険も簡単にあしらえるぐらいには強くなれないと困るでしょうけど……勇気と無謀は違うから。

そう、それで、オルゼまでは街道沿いでもそこそこの日数がかかるって話らしいの。
だからアリシアとも相談して、今までは２人でやってきたけど、もう少し同行者を増やすって話になったの。
とは言え街の外じゃ何があるかも分からないし、早々誰でもって訳でもいかないしで、少し困ってたのよ。
で、しばらく新しい同行者どうしようって思いながら街をぶらぶらしてたら、中央街門前で、えっと……なんて言ったっけ。
ウィゼル……だったかしら。なんか軽そうな男がお茶でもどう？　なんて声掛けてきてね。
少し暇もしてたし、それだけのつもりで付き合ったの。
で、近くの喫茶店でごちそうになりながら話を聞いてたら、どうやらウィゼルの方も二人組のご同行らしくてね。
ちょうど同行者探しに行き詰ってたし、

ヴァンエッタ「今、野盗討伐の依頼と、オルゼまで向かうまでの同行者を探してるの。
ウィゼルの方はそんな予定ない？」

って、思わず聞いちゃってね。
しかも聞いてすぐ即答よ。是非一緒にって言われちゃったわ。
だからちょっと戸惑って思わず、

ヴァンエッタ「あ、でもね？　そう、誰でもいいって訳じゃないのよ？
信用できるか……は、まあ、今話しててなんとなく分かったけど、
ある程度の腕はないとこっちだって困っちゃうし」

なんて言っちゃって……
そしたらトントン拍子で、翌日までにもう一人を（なんとか？　だったか、どうにか？　って言ってたかしら）連れてくるから、
模擬戦闘形式でお互いの力を確認し合おう、なんて話になっちゃって……
まあ、そこまで進んじゃうとそこでいきなり断るっていうのもしづらくって……で、結局その話が生きたまま別れちゃった訳。

さっきその事でアリシアと話し合ったけど、大筋受け入れてくれて助かったわ。
アリシアも、同行者が見つからないまま街で足止めなんてって少し悩んでたのかしら。
後は明日ウィゼルともう一人に会って、その一人がまともで、アリシアが相手二人に対してＯＫって言ってくれれば、それで万事問題ナシね。
…………大丈夫よね、うん。なんか思ったより不安が多い気がしてきた……ま、まあ、今更よ。

あと、は……そうね。【合成】技能。
やっぱり予想通り、要素抽出と混合はこの世界での一般技能だったみたい。やり方はなんか人それぞれらしいけど。
別に特別な技能じゃなかったからってガッカリなんてしないわよ？
一般技能って事は、それだけ参考にできる情報が多いって事だもの。
そう慣れない場所で最も大事な事は経験と、それを埋めて補う情報だから。
酒場や図書館で調べた結果、おおよその法則は掴めたし、これからは今まで以上に冒険の役に立てられるはず。

【付加】や【合成】での特殊能力があるとないとじゃ大違いなのよね、この世界。
なのに一般的に武具や道具が流通してないのに何か理由があるのかしら……

ま、その点この間のハムスターからいただいた物からアリシアに作ってもらった新しい槍については、何の不満もなくて素敵だわ。
……毛じゃなくて、牙ね。毛から槍とか──この世界じゃ作れそうだけど──弱そうじゃない。

そういえば、この間街への帰り道にアリシア、ハムスターハムスター呟いてたけど大丈夫なのかしら……
あれ相手じゃ忘れられないのは分かるし、アリシア戦闘中もひどかったけど、さすがにもう引きずってないわよね……
今度また同じような事になってたら、この毛束でも見せてあげ　……よけい悪化しそうな気がするからやめましょう。
多少強引にしても目を覚まさせなくちゃ。

……さて、明日はウィゼル達との模擬実戦もあるし、早めに休むとしましょう。
場合によっては命を預けるかもしれない相手の力を測るのに、自分の体調が万全じゃないなんて洒落にもならないし。