ENo.3339 刃皇耶　竜斗

アキ「あーもう、今回は絶対ゆっくりするわよ！」

竜斗「はいはい」

ユエルン「ふふふ」

ぎゃんぎゃんとわめくアキさに対し、
苦笑して返事を返す俺と微笑を向けるユンさ。
ここはオルゼの街。
スティルフやエスタよりも北に位置し、
山の麓……どちらかと言うと盆地に存在していた。
南にある山岳の入り口として。
また、山を越えてきたもの太刀の疲れを癒す場として、
人が沢山行きかい、発展してきたのだろう。

エスタはどちらかと言うと古風な感じで洗練されていたが
オルゼは普通の意味で洗練されてるな、見ていて楽しい。
スティルフとも別の意味での活気がある。
あっちは外から来る人の始めに行き着くところみたいだし、
港みたいなものだろう。

ま、それは置いておくとして……。
アキさがどうしてこうも遊びたい！遊びたいでござる！！と叫んでいるかと言うと

アキ「なに人をダメなやつみたいにいってんのよ！」

あ、はい。すみません。
てか、ナレーション的俺の呟きに突っ込まんといて！？
えー、で……どうしてかっていうとだな。

―切り立った崖にある洋館―

昨日来た森の傍にある山に、別の依頼の場所である洋館が存在することが判明。
とりあえず、様子見だけしてみるかってことで行ったんだが……。
そこにはシスターが居た。
まぁ、うん。ゾンビ退治依頼だしね。
居てもおかしくない。
さて、どんな状況かね……と敷地内に入ってみようとした瞬間。
出るわ出るわ、ゾンビの群れ。
しかも

ゾンビ「今日はいい天気ですね」

挨拶までしただとー！？
普通にいいヤツ臭いんだが……いや、うん。
臭いも確かに臭いんだが。
あ、一部はほぼミイラ化してて乾燥してるんでそんなことはなかったが。
まぁそんなことはどうでもよくてだな。

こんなに相手が居るんじゃ流石に昨日の今日じゃ分が悪い。
多人数相手で負けた後にコレじゃ、ちょっとやる気は起きない。
というわけで、ココは事を起こす前に引こうかと思ったところで

レムネット「前は任せてください、体力には少し自信があるんですっ！」

何でこの人数相手にやる気満々なのこの人ー！？
って言うか明らかに俺ら数に入れた！？
これは……仕方ない、やるしかないかなぁ。
と弱腰でいたら、レムネットさんが一人突っ込んで行ったー！？
なんてアグレッシブなシスターなんだ！？
で、出遅れたかあるけど、や……やるかな。

と、そんなことがあり、まぁ結論としては

ユエルン「連敗の憂さ晴らしですよね」

って、大事な締めだけ持ってっただとー！？
てか、君もココに突っ込んでくるんじゃないよー！？

んっんー！
とまぁ、そういうわけだ。
流石に相手は俺らの３倍も居る９人。
どうしようもなかった。
もうちょっと１体に対しての力量に差があるなら違ったんだろうが……。

レムネットさんには悪いが適当な所で降参したしね。
なんだかんだ言ってまた昼寝に戻っていく辺り、
ヤッパリ気のいいヤツラなんじゃないかと思うわ。
むしろ、昼間でも平気とか一体どういうこと。

長々とどうでもいい説明をしたが
とどのつまり、出来上がったのが多少体力が有り余ってる俺らってわけだ。
昼過ぎくらいに急いで山を降りてきてしまったので
時間まで余っていると言う始末だ。
これは、前回エスタの街でバタンキューだったアキさには
絶好のリベンジチャンスと言うわけだ。
そもそも、全体的に滞在時間は短かったしね。

アキ「と、いうわけで。色々見てくわよ！」

竜斗「あーい」

ユエルン「はいはい」

アキ「こらそこ！覇気がないわよ！！」

旅はそもそも、各地の名勝を巡りその土地の特産や名産を食べ心を癒すものである。
特に、料理こそが旅の醍醐味とも言われる。
エスタではそこら辺全く楽しめず、
忙しいままにバババッと全てを済ませてしまったので
今回は俺らもそれなりに楽しむつもりだ。
宿も既にとって荷物は置いてきた。
買い物は明日にでも済ませればいいだろう。
店の場所も押さえたから問題はない。

竜斗「とりあえず、散策して回ろうか？」

ユエルン「そうですね、エスタの街よりもここは発展してるようですし」

アキ「あっちはなんか古びた感じだったよね」

竜斗「それはそれでいいものだけどね」

古風さと言うものは大事である。
名勝は何故に名勝かと言うと、
美しさなどもあるが主にそれは歴史があるからだ。
人はそこに過去あったであろう風景などに思いを馳せるのである。
ただの観光地との違いはそこにあるのだ。
エスタはその点古風な街並みだった。
凄く落ち着く感じである。
が、

アキ「こっちはこっちでいいじゃない、見てて飽きないし」

ユエルン「その街の発展方向が顕著に現れるのは面白いですね」

竜斗「そだねー、回るのに飽きはないね」

このオルゼは芸術に秀で、
石造りの街並みが古風さよりも美観を強調して成り立っていた。
これは計算されて街を建てていったのだろう。

竜斗「うーん、為政者の腕が分かるね」

ユエルン「ええ、こうして街の造りにまで手が入っているのは立派です」

アキ「そういうもんなの？」

竜斗「うん、それなりにね」

自分の住まい等ばかり豪華にして、
全体は貧相な街なんてのは結構ある。
ここはそんなことはない、上に活気もある。
もちろん、住民の意識も高いのだろう。

アキ「あ、アレ串焼きじゃない！？」

竜斗「お、いいな。食べに行くか！」

アキ「竜斗にしてはいい提案じゃない！！さぁ行くわよ！！」

竜斗「イェイェーイ！」

ユエルン「あ、待ってくださいよ」

串焼きの屋台を見つけ、勢い込んで３人で一本ずつ買う。
主には鳥だが、豚や鹿、珍しいのには猪なんかもある。
山間の街だからだろう、森も近いようだしね。

竜斗「あつつ、火傷しそうになったわ」

ユエルン「もう、子供じゃないんだから気をつけてくださいよ……」

アキ「あっつー！！舌焼けたわ……」

ユエルン「言ってる傍から！？」

ユンさんが完全保護者である。
まぁ、彼女っぽいっちゃぽいが。

アキ「でさー」

竜斗「んぉ？」

はふはふと熱い肉を頬張りながら急に話を降られる。
こっちも肉に噛み付いてた途中で変な返事を返す。

アキ「この後どうすんの？」

竜斗「あー、どうしようねー」

アキ「ちょっと、決めてないの？」

ま、連敗続きだから早くスカッと勝ちたいって気もわかるが
如何せんこの周囲に何があるかについて何も聞いていない。

ユエルン「まぁ、まだ情報も集まってませんしね」

竜斗「うん、ああそうだ」

アキ「何よ」

竜斗「ここから、西に向かってスティルフに戻るように行くと丁度依頼の位置じゃないか？」

ユエルン「ああ、あれですか」

そういえば、ココから丁度西に行ったところで野盗退治なる依頼があったのだ。
しかし、南回りのルートを取ったので結局行かずじまいだったのだが……。

アキ「へぇ、いいじゃない。ギッタンギッタンよ！もげらがどれだけ素晴らしいか教え込んでやるわ」

竜斗「ははは、頼もしいなぁ」

アキ「竜斗も、もうちょっと気張りなさいよね！全くだっさいわね」

竜斗「へーへー、さて」

食べ終わった串を、屋台の脇に設置されていたくず入れに放る。
力を入れた投げたそれはふちに刺さるように当たるが、弾かれ、一旦宙を回り

カラン

入った。

竜斗「んじゃ、情報集めようかね。他にいい話もあるかもしれないし」

アキ「よし、頑張んなさいよ！」

ユエルン「ええ、頑張りましょう」

英気も養ったし、こっからまた頑張るかね。