ENo.143 サクラリッジ・バロックヒート

セルフォリーフ救済支援活動レポート

■1.シキミ零式について
1）基礎動作及び戦闘関連
動作に問題は無し。スペックに準じた戦闘力を発揮出来ている。
ただしリンカーの関節部への負荷が想定よりも高い為
活動可能時間に支障が出る可能性が高い。改善が必要。
補助AIの学習は順調に進んでいる。

2）魔力炉及びMGF関連
現時点では問題点は発見されず。連動も問題なし。
しかし暴走体の凶暴性を考慮すると、更なる出力の向上が必要。
354式ブースターパックのテストも良好。

3）Psycho-Amplifier関連
動作に問題は無いが、やや出力と安定性に欠ける。
リンカーの練度向上が必要。

4）僚機との連動
ヒサカキ壱式との基礎モーションは構築済み。実戦データを組み込み、改良中。
TF社のクリューソスとのモーションパターンはカタバミ重工の軽量級のものを流用。

■2.マテリアルについて
1）鉱石系
砂地及び平原地帯でいくつかの種類が採取出来るが種類は少なく、素材としても小振り。
内包するエネルギー量も有益ではあるものの、特筆には値しない。
より多くのサンプルを採取するには山岳地帯の調査が必要。
山岳地帯に潜む暴走体は戦闘力が高く凶暴なので、戦力の増加及び隊員の練度の向上が必要。

2）植物系
砂地及び平原地帯で採取出来る物の傾向は鉱石系に準ずる。
森林地帯で採取可能な物は内包するエネルギー量が多く、質も高いために有益だが
加工難度が高く、扱いが難しい。素材としては嵩張るのも難点。
調査には多くの時間がかかるものと思われる。

3）生物系
討伐した暴走体の体組織。巨大化により、その内包するエネルギー質量もかなりのもの。
しかし、戦闘を介する必要がある為、欠損なく採取するには難度が高い。
採取量も安定しない為、貴重。

4）合成系
合成技術により生成される物体群。
安定供給可能だが、セルフォリーフ内での法則に依り生成されるものであり
アンテセラ内での生成は不能だと思われる。

■3.暴走体について
1）暴走体の実態
有機体、無機物問わずに暴走を確認。
現時点では暴走する対象の基準を定める事は不能。
昆虫、両生類、は虫類、鳥類、人類、植物などの暴走体を確認
生物はほぼ全て暴走の可能性があると思われる。
亜人種や竜種など特殊な生物の暴走も確認されており、要調査対象。
食品、生活雑貨、鉱石なども生体に比べると少数だが暴走体を確認。

2）暴走体に共通する事柄
巨大化及び異形化している事が多く、戦闘力が高く、好戦的。
脚部の無いものは飛行能力を得て人を襲う傾向にある。
有機体、無機物問わずに人語を発する。
そのパーソナリティは多岐に渡るが、概ね不可解な傾向にある。
言葉を発する事から何らかの意志やプログラムが備わっているものと思われる。
発声に声帯を必要とはしておらず、外部要因に依るものと思われるがその仕組みは不明。

■オリヴィア・デフォール・コルストフィア護衛任務について
当人の意向もあり、リンカーしての訓練を施行。
指導は私、サクラリッジ・バロックヒートが担当。
護衛対象自身の戦闘技術及びサバイビリティを高めることで
結果としてアンテセラへの無事な帰還を図るものとする。

■他企業のリンクス及び、アンノウンについて

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スティルフの中継基地へ送信。
採取したサンプルやデータと共にアンテセラへと送られる。
カタバミ重工との契約による業務。
その報告書の作成は小隊長であるサクラリッジの仕事だ。

「かーっ、疲れた！めんどくせぇ！」
溜息とともに突っ伏すサクラ。

「お疲れさまです、ご主人さま。」
ことり、と湯気をたてるマグカップが側に置かれる。

「おぅ、ありがとよ。ぁー、もう、めんどくせぇぇ…」
「それもご主人さまの仕事ですからね。我慢してこなしてください。」

やえは宥めるように言ったが、サクラは溜息で返すだけだ。
ある程度手伝う事は出来るのだが、それをさせないのはサクラの意志だ。
あれこれと多くを抱えてこなしているのに、余計な仕事まで押しつけたくはない。
まぁ、面倒臭くても自分の管轄の仕事ぐらい自分でやるというだけのことだが。

珈琲の芳香が鼻腔をくすぐった。
起き上がり、ぐいっとマグを傾ける。
「おっ、良いなこれ。ブレンド変えた？」
「はい。エスタの街で良い豆が買えたので、試しに。」

掌でマグを軽く揺らし、ゆっくりと波打つ黒い水面を眺めていた。