案内された船は、見事な高速船だった。はじめての乗船にテンションのあがるエリュニウスである。 「わぁ、なんだかごうかな感じですね…！どきどきします！」 手早く船内の説明を受け、中央部のサロンスペースにてくつろぐ３人。 荷物になるものは手持ちのバッグしかないエリュニウスは、そのままふかふかのソファに座ってはしゃいでいる。 「船内の説明も終ったし、作戦を考えましょ。まずは、皆の得意なことからね？」 ラティスの音頭で、くつろぎながらも今後の作戦を考えてみる。 エリュニウスは今回、物理攻撃よりも魔導力というものを使った攻撃の方が得意な身体になっているため、そのように説明した。 ラティスはどちらかというと物理攻撃、カームもそちらの方らしい。 ただ、カームとエリュニウスが攻撃向きなのに対し、ラティスは治療もできるようだった。 これからがんばらねば、と気合を入れる。 軽く探索の際の作戦がまとまったところで、探索協会から連絡が入った。 他の探索者との練習戦が出来るようで、今回の相手が決まったとのことだった。 指定の時間に指定の場所に行けば良いらしいので、協会から送られてきた相手の基礎資料をみんなで見ながらちょっとした方針を立てる。 「皆さん、強そうですよねぇ…。探索でもナニカ出てくるそうですし。」 「だいじょーぶよ、少しは治癒もできるから、エリィちゃんは攻撃に専念して。」 「攻撃はこの方に集中した方が良いですかね。各個撃破でいきましょう。」 練習戦の作戦もまとまったので、盛り上がった話の中、すっかり飲み頃を逃した飲み物を淹れなおし、それぞれテーブルに置かれたお茶請けに手を伸ばす。もうすっかり夕食の時間でもあったので、軽い食事になりそうなものも置かれている。 「そういえば、さっき船のところに来るとき、いろんなお店があったのを見ましたけど、何か面白そうなところありました？」 「私はいくつかメモしておいたわ。あとで行ってみようかと思って。」 「食べ物やさんもありましたけど、たくさんあって目移りしちゃいますよね～。」 きゃいきゃい、と女の子らしい会話で盛り上がる３人。 あそこのアクセサリが綺麗だった、あそこの食べ物はおいしいと思う、などオススメ情報をお互いに話し合って、手元のメモは真っ黒だ。 ……心なしか、作戦よりも詳しく話をしている気がするが、気にしてはいけない。 ひとしきり話に花を咲かせた後は、夜ということで身体を休めることにする。 「休養は大事よ。ご飯と睡眠はきちんと摂らなきゃ、出来ることも出来なくなるわ。」 「ですね！今日はみんな来たばかりで疲れていると思いますし、また明日、頑張りましょう！」 「おやすみなさ～い」 それぞれ好きな部屋に入っていき、テリメインの最初の夜は更けていく……。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

エリィは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。