はじめて潜った海は広く、深く、思っていたよりも暖かだった。 　穏やかな海《セルリアン》、と、呼び習わされているらしい。 　潜る前に想像していた海の中よりも、ずっと過ごしやすかった。 　遺跡の探索に向かったのだけれど、出て来たのはよくわからない生き物たち。 　それに、遺跡もまだ奥深くに続いているように見えた。 　先は長そうだ。 　おそらくは、この辺りの海はもうあらかた調査が済んでいるように思える。 　周りに同じ探索者も多く、協会からも遠くなく、水の中も穏やかで。 　そんな場所はまず真っ先に探索が進められる気がする。 　そのくらいなら、わたしにはちょうどいいかもしれない。 　真っ暗な海とか、すごく熱い海とか、そういうところには……できればあんまり行きたくない。 　それに、わたしの目的は海のずっと向こうへ行くことであって、 未知を解き明かすようなことにはあんまりこだわりはないのだから。 　通り抜けるのが簡単ならそれは願ってもないことだ。 　この海を抜けた先には、また違った姿の海が待っているみたいなのだけど。 ◆─────────────────────────────◆ 　ほかの探索者の人たちにも、何人か会うことがあった。 　植物みたいなお姉さん（ほんとうに植物なんだろうか）　、真っ青な髪のお姉さん、 一緒に海に潜っているらしいとりとお兄さん、きのこを育てているお兄さん───。 　…………なんだか、いろんな人がいるというのは分かった。 　それにまだまだきっと、色々な人に会いそうな気がする。 　でも。 　わたしが近くにいて、迷惑がかからなければ良いのだけど。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

ふきょうは、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。