"兄" 無事パーティの合流が済んだ。 正直2匹・・いや、2人とも来るとは思わなかった。 強制力も何も無い、使役術や誘惑術（チャーム）の類も使っていない、 炙り出しの為に魔術を少し使っただけのただの手紙だったのに。 まだパーティを組んでいなそうな人に、紙飛行機を飛ばすという運任せにも程がある手法。 ロザりんに催促されたとはいえ見合いじゃあるまいし、 初対面と組むのは警戒心が足りなかったかも知れない。 やっぱりまだ混乱していたのかも。 ともかく、探索規約上認められるパーティ数の3人集まったんだ。 シルビオ「えっと、とりあえず今日はあっちから一緒に探索だな。 　　　　　　実力テストもやったんだ。敵との遭遇もあるだろう。 　　　　　　二人とも、そういうのは大丈夫か？」 水分「んー、あんま戦いとか慣れてないけど。 　　　 まあ、あんたよりは役に立つと思うぜ。」 両手を後頭部で組み、ミクマリが答える。敵意は疎か、悪意も無い。 シルビオの非力そうな雰囲気から読み取ったのだろう。 その発言がシルビオを苛立たせる。 シルビオ「今ここで勝負するか。」 水分「おう、売られた喧嘩は受けて立つぜ！！」 シルビオ「売ったのはお前だろ！！！」 水分「はあ？オイラが？売った？いつだよ言ってみろよ！」 洸「おい、お前ら組んで早々にガキのような喧嘩は…」 水分・シルビオ「「少し黙ってて！！」」 洸「あっ、はい。」 しばらく睨み合うが埒が空かないので洸に話しかける。 シルビオ「鮫人族の…じゃなかった、洸さんは戦闘はどう？」 洸「あぁ——まあ適当にやってりゃいいんじゃｎ…」 シルビオ「気乗りしなさすぎ！」 思いっきり腹にパンチをする。 シルビオのパンチは大して威力は無いが、痛そうなリアクションを行う。 洸「ごふっッ！今回も鮫使いの荒いやつだな。」 シルビオ「オレのパンチ位、何十回やったとこで痛くないだろ。 　　　　　　丈夫そうだし戦闘に自信アリってことでいいよな。」 洸「えっ、ちょっ…」 シルビオ「はい、決定決定！今日は宜しくな、二人共！」 強引に話を畳み掛ける。 洸の鮫人族は本で見たことがある。 召喚術には大まかに2つのタイプがあり、「使用者の魔力を器に情報を注ぎ"作る"」か「異世界にある対象を"呼び出す"」やつがある。 オレはまだ未熟だから前者しか出来ない（出来なかった）が、鮫人族は後者で呼び出すことが出来る筈だ。 今回も、という話の流れは十中八九誰かと契約していて呼び出されているのだろう。 高度な使役術・分割世界すら跨ぐような空間転移術と組み合わせた応用魔術。 契約さえ行えば異世界の幻獣等も呼び出せる分、魔力を媒介で作るより力は未知数だ。 何れにしても使役術の1つの意思疎通術を使わなくても、 言葉が通じるヒトを使役するのはまだオレには気が引ける。 だから、洸の話題は避ける。探索者として見たほうがきっと上手く行く。 ——水分の洸に対する視線から感じ取れる捕獲欲が、 読み取れるところは一先ずソッとしておこう。 水分「ああ、やってやろうぜ！鹿みたいな耳と角が生えている兄ちゃん！」 喧嘩のわだかまりからか、耳と角の事に触れられる。 この事に触れられるのは嫌な方だ。水分は妙な所で勘が働くようだ。 が、それ以上に兄という呼称が気になり反応する。 シルビオ「おいおい、ちょっと待てよ。オレは兄でも何でも——」 水分「えっ、年上だから兄って呼んじゃいけないのか？」 シルビオ「いや駄目じゃないけど…。」 言い淀むシルビオにきょとん、とする水分。 オレには兄弟という感覚がわからない。 ペットを使役する、魔力を媒介に魔物を召喚するというのとは違う何か—なんだろうな。 若干目逸らし気味になるシルビオに水分はニカッとして答える。 水分「おいら、年下の兄弟姉妹はいるけど年上は初めてなんだよな。 　　　宜しくな、シルビオ兄ちゃんとコウ兄ちゃん！」 視線を一瞬水分の方に向けた後、水分の方に笑顔を向け答える。 シルビオ「—あぁ！お兄ちゃんに任せとけ！」 ミクマリ「（結構ちょろいな。）」 洸「（まだ帰れそうにないし、ついていくか。）」

シルビオはアイテムNo0 蒼い魔石 を使用しようとしたが、効果がなかった。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。