12/9 Friday

さてさて。 前回は無様にも日誌を開くことを忘れてしまったけれど、今回は滞りなく記録を残すことができました。 海中探索も板についてきて前線に到達した頃、各地では「願いを叶える魔法がある」というウワサが流れ出してきて、ああこれはまさしく無謀な冒険者の集う地だなと実感した次第です。 錨と銛を取り違えたり、ガチャに夢中になってお金を溶かしたり、海中で焼き魚を拾ったり既に語ることの尽きない場所ではありますが、今日はとりあえずの報告で終わりにしたいと考えています。 というのも、「海賊」による活動がいよいよ本格化してきたとのことで、 少しばかりの対策講習会というものがあり、そちらに時間を取られてしまいました。 馴染みのカフェも見つけた今となっては、この地にもそれなりに愛着が沸いてきた頃。 少しのことでは負けはしないと自負してはいますが、不安は募るもの。 出来ることなら自身も、一緒に過ごしている二人も大きな怪我なく無事に過ごすことが出来たら良いな。

フィデナムア 「おはようニッポン！あ？なに？ジャパニーズじゃない？まあ確かにThis is a Japanというにはちょっとテリメインは遠すぎるかな。ちなみにフィデナムアはラテン語で『曇り空』の意味だぜ。ウソだぜ。 やあやあ諸君こんばんわ。運がよかったな。今日はオリヴィア君が見張っているようだ。 今週だって俺が言うまで結局日誌の存在は忘れてたくせにな！オリヴィア君は頭の記憶容量カラッポなんじゃないかな？夢を詰め込みたいタイプなのかな？恐竜に玉乗りを仕込もうとして潰されたい人間？ア、これ本人の前で言ったら髪の毛を結ばれるから秘密にしといてね。」

「アーーーー、そうだよ。 オリヴィア君と俺は今のところ、いわゆる主従関係にある。びっくりかな？ 奴さんが数年前に俺に臨んだ願いはこうだ。 　　　　　『悪魔による庇護を所望する』 莫迦げた願いだろう。誰だってそー思う。俺もそー思う。 ところが奴が実際にそう願ってしまったのだからもうたまらないワケ。 おかげで俺様ちゃん様は幾十年もオリヴィア君に付きまとわねばならない宿命を背負ってしまった。 こんな契約さえなけりゃこんな辛気臭い海……エホン、オホン、オッフェンブルグ、ともあれ、来はしなかったね。 奴さんの目を忍んで方々に足を運ぶのにも限度があるし、危ない場面では守らねばならんからな。 まこと悪魔というものの使い方を心得た卑しい小娘だよ。」

「それはそれとして諸君には是非とも悪魔を下手に扱ってほしいな！ そうすれば俺も安心して職にありつけるというものだ。 清廉潔白な悪魔フィデナムアに清き一魂を！てなもんや三度笠…… ウワ、待って待って。なんでアイツは人が日誌に落書きするのを見張るかな。 仕方がないから今日は此処までだ。サヨナラ三角、また来て□街。 願いを叶えたいならあるかもわからない魔法なんかより悪魔を頼れよお風呂入れよ歯磨けよ！月を見るたび思い出せ！」

オリヴィアはアイテムNo.4 SSシェルボックス（低） を使用した。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

ここ、最先端探索拠点を越えてしまえば、そこはもう未開の海だ。
オリヴィア達のような探索者たちがどんどん先へ進めば、
後々海底探索協会が、このような拠点を設けていくのだろう。

この先はどんな危険が待ち受けていても不思議ではない。
誰も踏み入れたことのない場所なのだ。
準備を怠らず、慎重に進むといい。

どのような生き物が居るのか、どのような未知が、はたまた宝が眠っているのか。
それはこの先へ自ら進んでいく者にしかわからないのだろう。

海は、まだまだ先へと広がっている。