X月X日 "教官"との戦闘は、ひどいものだったと言わざるをえない。 モジュールは思うままに操る事適わず、振りかぶった大鎚は傍らの大岩に激突するのみに終わった。"教官"の突撃さえ、避けるも防ぐも失敗し、私を覆うガラス玉にヒビを入れられてしまった。 幸いにして審査は相手の酸欠という形で勝利を収めたが、このままでは先が思いやられるというものである。プロジェクトチームに新しいガラス玉を要請するにも暫く時間がかかるため、已む無くヒビが入ったまま探索を行わざるを得なくなるだろう。割れてしまわないことを祈るばかりだ。 斯様にして探索の滑り出しは、不安材料を大いに抱え込んだものと相成った。このまま無策で行動を続ければ、私の生命が易々と喪われるだろう事は想像に難くない。 安直な発想だが、仲間を募るのは有効な対策だろうと思われた。私と志を同じくする探索者が他に居ないだろうか。そう思惑しつつ辺りを見回していると……物陰で屯する、ガラの悪そうな二人組が此方を見ている事に気がついた。 一人は私と同じような潜水服を身に纏う者だ。人間の形をしているが、曇ったガラスが嵌め込まれた兜の奥の表情は読み取れず、底なしの不気味さを湛えた者だ。彼の者の右腕は鈍色の鈍器を握りしめており、優れた膂力を持っていると推して量れよう。 もう一人は…ふわふわとしていて、両性的で…年齢も不明瞭な…何者かだ。文章に興すのは極めて難しい姿形だ。どちらかと言うと正義に唾するような者に見えるが…… 極力関わり合いになりたくないので目を背けようとしたが、潜水服の人間が此方に近づいてくるのが伺えた。私から追い剥ぐつもりだろうか。 咄嗟に私も鎚を構えるが、私に接近する者はそれを手で制し、どこからか貨幣を取り出す。訝しむ暇もなくそれを放ると、貨幣は緩慢に海底に落ち…出目を示した。彼はコインの裏表を認めると、首をグイと振るって先程の物陰を示した。意味は理解しかねるが、どうやら私をチームメイトとして招いているらしい。 非常に怪しい二人組だが、このまま突っぱねて一人旅になるよりはマシだろう。一先ず、この者たちと行動を共にしてみようと考えた。 ※チームメンバーの詳細な情報は別紙2.1として添付する。 さて、準備が整えばいよいよ本来の目的である海底探査の幕開けである。チームメンバー共に遺跡探索を目的とする事に異存はないらしく、各々得物を構えて意気高い様子である。 他の探索者も多くは近場の遺跡に足を運ぶらしい。[海底探索協会]が元々それを目的に人を募っていたのだから、当たり前といえば当たり前なのだが。チームメンバー以外との交流の機会も、もしかしたら有るかもしれない。 さて、遺跡の探査であるが… この建物は元々地上で作られたものであり、何らかの理由で今のような海中に没する遺物となったであろうと推測できる。世界各地で地盤沈下が起きたのか、神話で語られるような大水で満たされたのか、そこまでは簡易な調査では判然としない。 尤も、我々[既存資源発掘及び新物質発見を目的とする異世界探査プロジェクト]のメンバーは、滅んだ遺跡を調査する事を目的としてはいない。ただの石壁なら壊して進むまでであり、貴金属で出来た装飾品や祭具などが有れば、回収して溶かしてインゴットにするのみである。 即ち、目の前が行き止まりなので大鎚を振るって打ち破った。"教官"とは違い、止まっている対象であれば容易い事であるが…考古学者が見たら卒倒する光景だろうか。 模様を刻んだ石壁が崩れる……大音を立てたからか、敵と思しき生物が寄ってきた。ヒトデとナマコと……この棒人間のようなのも生物なのだろうか？ 何処かで見た事有るような気のする造形だが、気のせいだろう。 戦闘だ。新たなチームメンバーの実力を見るのも兼ねて、良い機会だろう。私も早くモジュールの操作に慣れなくては。 |所属長|監督官|探索者| |　 印 　|　 印 　| (ノッタ) |

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。