いつだって、森は静かだった。 海とも、それが運ぶ潮風とも、そういったものからは程遠く見知りもしない地で、 絡み合う木々をほんの少し切り抜いたように、リケンタ村は存在していた。 そこに住む人々は野草や木の実を摘んだり、獣を狩ったり、 深い森と自然の中でこっそりと息を潜めながらその生活を営んでいたし、 毎日水を汲むために訪れる湖が海に繋がっているなどとは知りもしないでいた。 獲物から得た骨や皮、そして村の周囲に有り余って生息する木々を使った工芸品などを、 森の外にある街まで売りに行く者も居たが、リケンタ村の名は殆ど知られていない。 村人は皆、森の中にある村の存在を隠し続けていたからだ。 極西の森とも呼ばれるその地については、妖精と偏屈なエルフ、そして魔女の噂が絶えなかった。 特にその中でも『人喰い魔女』の噂はまことしやかに囁かれ、 飛び降り事故で悪名高いどこぞの橋さえも差し置いて、小国の中でも一番の"名所"として存在した。 リケンタ村を覆い隠す極西の森は、人死にの地であった。 ———あの森に入る時は、一刻までにしておきなさい。 それ以上留まったら、妖精達に捕まってしまう。魔女に見つかったら喰われてしまう。 一部ではそんな風に子供に言い聞かせるほどの、曰くつきの森であった。 しかし、古くから森に住むリケンタ村の人々は魔女の噂がまやかしであることを知っていたし、 熊や毒虫の方が魔女の幻影よりもずっと手強い存在であることも知っていた。 それでも、何の勝手も知らない人間が森を荒らすことを恐れていた村人たちは、 在りもしない『人喰い魔女』の噂さえも"魔除け"として、人払いに利用し続けていた。 故に、リケンタ村の名は殆ど知られていない。 十年前に村を滅ぼした病の正体が、何であるかも知られていない。 ----------------------------------------------------------------------------------

「……ただいま。」 ジギスが苔むした木のドアを足で開けようとすると、半分ほど開いたところで止まった。 数十年も前に建てられたままの小屋はツタに覆われ、とにかくそこらじゅうの建て付けが悪い。 ドアから外れかかった金具がギリギリと音を立てながら、床板の何重にも重なった傷をなぞる。

「そうやって雑に扱うから、すぐ壊れるんでしょ。」

「あ？両手が塞がってるの見えねェの？」 結局足で蹴り飛ばすようにドアを開けてみせた彼に、 小屋の奥からそれを見ていた少女、シグヌータは呆れたように指摘する。 ジギスもそれに張り合うように言い返して、両手に抱えていた袋やかごを小屋の隅に投げ落とすように置いた。 その拍子に、かごからいくつかこぼれ落ちた芋を拾い上げて、シグヌータは首をかしげる。

「何これ。」

「食糧とか消耗品。何の準備もしてないって気付いたから、戻ってきたんだよ。 まあ、大丈夫だろうけど……。帰ってきたらお前が飢え死にしてたとか、嫌だし。」

「何で？」

「は？何でって、そりゃ……。」 ジギスはそこまで言って、一度、口を噤んだ。 転がり落ちた芋をかごに戻す手を止めて、小屋に帰ってきてからずっと、 ここに来るまで大してまともに顔を向けもしなかったことに気付いて、少女を見る。 まさに「どうして」といった顔できょとんとしたままのシグヌータが何を考えているのか、 ジギスにその表情の中身までを読み取ることは出来なかった。

「……一昨日、俺がした話は覚えてるか？」

「おとといの話？パスタの茹で時間について？」

「違ェよ。お前の病気について。 そんなにこだわりがあるなら、パスタぐらい自分で茹でろよな！」 シグヌータはもう一度首をかしげる。 テリメインの噂、ジギスがしばらく家を空けること、 そんな話をしたことなどすっかり忘れたという様子でいた。 ジギスは出かかったため息を飲み込んで、指先でトントンとテーブルを叩く。 「一度座って話をしようか」という二人だけの合図だ。 以前は喧嘩や言い争いの度にシグヌータが良く使っていた合図だったが、 最近ではジギスが使うことが殆どになっていた。 二人とも黙って席に着くと、テーブルに置かれた花瓶とそのしおれた花が二人の間に割って入った。 向き合うべき相手を隠し、視界を遮る邪魔くさいそれを、ジギスは何も言わずに隅に寄せる。

「……あのさ。テリメインに行こうと思ってる。」

「噂の？何で急に？ またこの前みたいに、私の病気をどうにかするため、とか言い出すの？」

「…………。大体合ってる。」

「……ホント、君ってよく分からない人だよね。 私なんて置いて、どこへでも行っちゃえばいいのに。」 先にため息をついたのはシグヌータだった。 ジギスは苦笑してみせると、その視線を目の前の少女から外した。

「私が病気なのは私のせいだし、君がどうこうするものじゃないよ。 関係ないじゃん。お人好しにも程があるし、本当にバカ。放っておけないの？」

「……うん。家族だしな。」

「まーた、そういうこと言う。 仮に家族だったとしても、他人だよ。 そろそろ、私じゃなくて自分のことに目を向けたほうがいいと思うな。」 シグヌータも、その視線をジギスに向けるのをやめた。 向き合って座っているのに、二人の会話はどうしても噛み合わない。 そのうえ、ジギスにとっては、一昨日交わしたそれと全く同じ内容の話だった。 否応なく繰り返し続ける日常会話。 時間の経過と共に、だんだんと記憶が失われていく病。 これこそが、シグヌータが患うどうしようもない病だった。 ひとつ日を跨げば、新しい記憶から順に忘れていってしまう彼女には、 他者と共有できるような時の流れも、昨日も一昨日も存在しない。 病を患ってからの十年間の記憶は殆どがらんどうで、 たまに得た知識や情報がその中にぽつぽつと残る程度のものだった。 病を治す術は見つかっていない。 そもそも、同じ奇病にかかった患者達はもうとっくに死んでいる。 病そのものも世から消え去り、今更治す手段を探す方が馬鹿らしいといったところだろう。 医者にも薬師にも呪い師にもろくに取り合って貰えず、 王都に現れたというあらゆる病も掻き消してしまう奇跡の子を訪ねてみれば、 少し前の魔女狩りの際に首を断たれて処刑されてしまったときた。 手詰まりだった。 実のところ、二人はとうに諦めていた。 そもそも、テリメインにまつわる根も葉もない噂群と、 人魚の生血と謳われる伝承さえも鵜呑みにしなければならない段階まで辿りついているのだから。 ジギスも、シグヌータも、内心では分かっていた。 もはや頼れるものは、魔法か奇跡しかないだろうということを。 そうして気付いたはずのそれも、シグヌータだけはすぐに忘れてしまうのだろう。 今までの絶望を忘れて、病が治ると心の底から信じていたあの頃に還っていくのだろう。

「……一緒に行くか？テリメインに。」

「やだ。」

「ですよね……。」 シグヌータは力強く頷く。何度も。 そうして、諦めたように再び身支度を整え始めたジギスをしばらく見つめていたが、 いざジギスが出立しようとすると、ようやく彼を引き留めるようにその手を取った。 ジギスはハッとして振り返ると、シグヌータは少し困ったような顔をしてジギスを見上げていた。 彼女の白く細い指が、するりとジギスの手から離れる。

「……私はずっと、ここにいる。 お兄ちゃんに、おかえりって言ってあげたいから。」 それぞれの決意を抱いて、双子の、同じ色の瞳がお互いの姿を捉える。 妹の言葉に、ジギスは、胸が握り潰されるような思いでいた。 言葉にならない気持ちを押し込んで、なんとか繕った笑顔で応える。 小屋の外に出るなり、ジギスはすぐにその苔むしたドアを閉めた。

「おかえりなんて、一度も言ってくれたこと無ェくせに……。」 彼女は、幼き日の少年を鮮烈に覚えている。 シグヌータが兄と慕うのは、ある日ぱったりと姿を消したまま、 今の今まで一度も帰ってきてはいない双子の兄だ。 シグヌータは、どうあがいても、新しい記憶から忘れていってしまう。 何かを新しく覚えることは滅多にない。忘れてしまったことを思い出すこともない。 ここ数年で背が伸び、声変わりも迎えたジギスのことを、自らの兄だとはかけらも思っていない。 血の繋がりは確かにあるのに、二人はもう、どうしようもなく他人であった。 妹が妹でなくなり、兄が兄でなくなったのは、二年前。 そこに居るのに、もういない。そんなお互いを見つめ合って、狂言を交わす。 その時にやっと、双子は病のもたらす事の重大さに気付いたが、片方はその気付きさえも忘れた。 いつだって、森は静かだった。 叫ぶことも泣くことも許されないほどに、静かだった。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

——辺りは穏やかな潮の流れと、ちらほら入る光で暖かい。
まだまだ遺跡は先へ続いている……。

ジギスは周辺を探索…………。

焼き魚を手に入れた！

ジギスはSSシェルボックス(低)を購入した。

ジギスはSSシェルボックス(低)を購入した。

ジギスはSSシェルボックス(低)を購入した。

ジギスはSSシェルボックス(低)を購入した。

ジギスはSSシェルボックス(低)を購入した。

ジギスは敏捷を訓練した。
ジギスは敏捷を訓練した。
ジギスは敏捷を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
ジギスは敏捷を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。
ジギスは敏捷を訓練しようとしたが、EXPが足りなかった。

赤布バンダナ に 回避力強化 を実行！
赤布バンダナ の 物理回避、魔導回避 を 1回強化した。

ジギスはアイテムNo.5 ウォークライを私有化！

ジギスはアイテムNo.6 ダブルアタックを私有化！

ジギスはアイテムNo.7 ヒールを私有化！

スキルNo.3 スイムアップ をアイテムNo.4 機敏 で改造！
スキルNo.3 スイムアップ に 機敏 を付加！

スイムアップ に シーリーコート と名付けた！

目的の決定