『xx歴xx年xxの月 記す』

未踏の秘境《テリメイン》そう呼ばれる海域に足を踏み入れた。 どうやらココには海底探索協会なる組織が機能しているらしい、 前人未到の海域と聞いて、それなりの覚悟はしてきたつもりだった。 ローレライ、巨大クラーケン、なんてものは船乗りの心構えや教訓として 『組織を乱す女に気をつけろ』『勝てない相手や自然相手に張り合うな』 そんな比喩表現として語り継がれてきた警句だ。 だが、この海域ときたらどうだ、ここにきて早々に驚かされることになった。 そんな私を出迎えたのは…亜人とでも呼べばいいのだろうか、 人魚や半魚人だのはお伽噺の存在だと思っていたが、長生きはしてみるものだ。 協会の奴らばかりではない、見たこともない装備や人種、不可思議な力、 私らの世界の常識とは随分ズレた場所のようで、年甲斐もなく興奮を覚えた。 コレは協力関係を結んだ、妙な装備を身に着けた嬢ちゃんの情報からの推察だが… にわかに信じ難いが異世界なるものが存在するようだ、 このテリメインは幾多の世界にも存在し、一貫して未知の海域となっているらしい。 まったく興味深いことだ…この老いた身体でも戦う術が得られるならばそれも一興、 未知の場所から再出発、なんて出来すぎた話だが精々楽しんでやるとしよう。

だが流石に個人の力でどうこうなるとは思わず協力関係を結んだ相手がいる。 まず「ニコラウとその手下100名」、まぁ端的に言って海賊団だ。 こいつらは同じ世界、という意味では同郷の出身と言えるだろう。 元々国家の機密情報の横流しや、商売敵の"説得"を経て互いに利用してきた仲だ、 船長のニコラウは机上の機微には疎いが利益の匂いには敏感な奴だった、 交渉事は副長のスプールを通すのが常で、時折嫌そうな顔でヤツも同席していた。 近頃は鉄火場に姿を見せなくなり、死んだだの、引退して娘に稼業を引き継いだ、 なんて酒の肴にもなりゃしない噂しか聞かなかったが、どうやら本当だったらしい。 いつものように副長を通し依頼をすべく立ち寄った酒場でソレを目の当たりにした、 あのニコラウの娘にしちゃ随分可愛らしい見た目の少女…アレは幼女だな、 無頼漢共が幼女に尻を蹴飛ばされながら働いているのを見た時は驚かされた、 実際あの男の姿は無く、その幼女が名を継いでニコラウを名乗っているのだと言う。 テリメインまでの足として同船を依頼したのだが…私も随分焼きが回ったようだ。 こいつらも噂の真偽を探っていたようで、私自ら動いたことが切欠となったらしい、 国家が発見した新航路の利用を好機と見て長期的な協力関係を結ぶことになった。 面通しに船長室に向かった時には「げぇ…なんでここに妖怪ババアが」と、 失礼な物言いが聞こえてきたが、一体あの男は私をなんだと思っていたのか、 あんな幼女に余計なことを教えこんでいないかと、心配するだけ無駄だったようだ。 協会側の試験の様子を見る限り、あのナリだが中々の戦闘力のようだ、 随分と荒っぽいが身の丈に合わない膂力に任せた突破力は目を見張る。 周囲の環境がそうさせたのか妙にオヤジ臭いのが不憫に思えて仕方ないが…

もう一人の協力者は協会で出会った、というよりはニコラウが連れてきた女性だ。 妙な兜に異様な腕、それ以外は水着しか身に着けていない出で立ちであった、 戦闘能力については未知数であり、今後の働きを見て判断するしかないだろう。 決してあの幼女が色ボケ基準で選んだので無いことを祈るとしよう、切実に。 くぐもった声で辿々しく話すその女からは随分変わった情報を得ることができた、 それが先述の異世界についての考察であり、この場が異質であることの証明だ。 柄にもなく随分書き込んでしまったが今日の日誌はこの辺りで終えることにしよう。

	穏やかな海《セルリアン》

穏やかな波、暖かい水温。太陽の光を透かし、キラキラと輝く水中に、
光とともに舞うように鮮やかな熱帯魚達が珊瑚礁に集まる海域。

この世界の窓口である探索者協会からも程近いこの場所は、
色々なところから集まってきたバカンス目的の観光客や、
これから冒険に挑もうとするものたちで賑わっている。

比較的凶暴な生物もいない、穏やかな、冬でも温暖の海である。

遺跡探索

（あなた）は、この世界の探索者としての一歩を踏み出した。
海底に沈む遺跡の探索——。

誰もがこの海の、この遺跡から冒険の一ページを刻み始める。
とはいえこの辺りはまだまだスタートライン。

もっとこの世界に眠る、謎や宝や未知の生物を目にしたいと願うなら、
このセルリアンの遺跡を抜け、さらなる海域を目指すといいだろう。

海はまだまだ遠く、広がっている。

——辺りは穏やかな潮の流れと、ちらほら入る光で暖かい。
まだまだ遺跡は先へ続いている……。

ヴェロニカは周辺を探索…………。

焼き魚を手に入れた！