記憶は戻ってきつつあるものの、それは映像の域を出ない。
そこに当たり前にあったはずの音は、どこに消えているのか。
自分の記憶であることはわかるが、思い出すことが必ずしも満たされることにつながっていない。
思い出す喜びは、かえって思い出せない何かを意識させ、ひどくもどかしい気分にさせる。
むしろ、寂寥は増すばかりだ。


親は、弟は、どうしているのか。叔父は。
いつぞや会った娘を思い出す。
名前を、オリヴィア、と言った。
父を探してほしい、と言っていた娘の気持ちが、今は少しわかる。
目の前に立ち塞がる鋼の鎧の騎士は、彼女の父に繋がる手がかりのようだ。
少なくとも、新王パラダイスの名を口にするくらいには。
……けれど、気は抜いていられない。
一人でもこの大人数の相手をしようという彼から漂う「気」は、わたしたちを圧倒する。


……負けるわけにはいかない。

（彼女の記憶の欠片は現在「444」＋5＋ 1D5 = 5 ( 5 ) ）