鈴鳴の導きの果て——導かれた僕達が手にしたのは紫色の布地に金の刺繍が成された分厚い本だった。
手に取って表紙や裏表紙、そして背表紙を見てみたものの、特に変な所はないようだ。

僕達は頷きあい、本を開く。
しかし開かれたページには何も書かれていなかった。
続けてページをぺらぺらと開いていったが、どのページも特に何かが書かれている様子はない。
結局、真っ白なページが最後まで続き、巻末まで到達してしまった。

シアが指差していたのは本の表紙裏。
言われてみてよく見ると、何やら模様の様なものが描かれていた。
つい最近どこかで見たような……？

ふと思い出してポケットに入れておいた眼帯を取り出す。
そう、『千里眼』アイズ＝メルフェンの遺した眼帯だ。

模様の意味を理解したシアの問いに答え、僕は『千里眼』を発現させ、その力を強める。
すると、今まで何も書かれていなかったページに文字や絵が浮かび上がってきた。
『千里眼』の視界をシアに分け与えた後、僕は改めて最初のページを開く。
冒頭にはこう書かれていた。



私はジョン＝モンテナ、59人目の転生体であり『冒険家』だ。

かの失われたはずの『千里眼』を持ち、これを読み解く転生者よ——ここに私の冒険の全てを記録する。

少々長くなるかもしれないが、しばし付き合ってほしい。



それは一人の冒険家の手記であった。