[No.?:Lela=Loreley]
[No.10:Eyes=Marchen]


私達の中には同じものを違った視点で創ったりする事とあったのよね。

例えば剣。

ある人はあらゆる物を斬る事ができる剣を目指し、剣を鍛えた。

ある人はあらゆる物を斬る事ができない剣を目指し、剣を鍛えた。



斬る事ができない剣？中々風変わりだな。
まあ当たり前のものという枠を抜け出すにはそういう風変わりなのも必要ではあるか……



ええ、私達が目指しているもの、それが何かはまだまだ分からないけどそれはその当たり前の中にはないはずだもんね。

それで剣の話に戻るんだけど、やっぱりちょっと違うことを目指した人もいたみたいで……
その人はあらゆるものを斬る為の剣を創ろうとしたらしいわ。



ん？それは最初の奴と何か違うのか？



うん、最初の人のは剣そのものなんだけど、最後の人のは斬るために創られただけでその形がたまたま剣だったということなの。

立ち位置的にはアイズさんの『千里眼』と同じような感じだと思う。



なるほど、概念を為すもの、か。
しかし何でも斬るとはまた物騒だな。
……つまりそれも『空白』になったのか。



ええ、それは使い方によってはとても危ないものだったから……
彼自身は特に悪人でもなく、誰かを殺めるような事は無かったのよね。
結局、何を目指していたのかは分からずじまいだったわ。



そうか……というかお前さん以前から『空白』の外を見る事ができたのか？



……あ、そういえば言ってなかったわね。
ええ、今に限らず私の『力』を使えばこっそり見ることくらい問題なくできていたわ。
あまり大っぴらにすると感知されるからあくまでこっそり、ね。

それでも今やってるみたいに『空白』から外をちょっと見るのがやっとね。
『空白』の中同士を繋ぐのはちょっと難しそうだったし、無理をすると今度は完全に消されてしまうかもしれないし……



……まあ無理はよくないな、ただでさえ巨大すぎる力だ。
しかし『空白』は成果を持たない者を表すと知らされていたが、実際の所俺達みたいに隠された者の方が多いんじゃないか？



うん。本当の意味で何も残さなかった人は数人いたかくらいじゃないかな。
それでちょっと気になってるんだけど、何で私達って『空白』の中に残されたのかなって。



そうだな……自分で言うのも何だが危険なら消してしまうのが一番早いんだよな。
消すには困る事情があるのか、それとも残す事で何かに利用したいのか……難しい所だな。



そうだねぇ。
どちらもあるんじゃないかなぁって思ってるけど結局は分からないままよね。
でも、知らなくてもいいかもしれないけど一応は気にしておいた方がいいかなぁって。



んー、それもそうだな。そこから何かわかる事もあるかもしれない。
さーて、そろそろ周辺探索再開と行くか。



うん、そうだね〜。
そろそろ誰かに会えるといいなぁ。




・〜・〜・〜・〜

今日も同様に礼拝堂を進む。
慎重に、そして着実に進む為に色々模索しながらだ。

もちろん進むだけではなく、他の一揆集との連携も図る。
装備、アイテム、通貨、戦闘連携。
それらを考慮すると個人で進むには様々な面で困難になってきていると実感している。

僕は不意に足を止める。
まだ少し遠いけど、この先で何か激しい気配を感じる。
今僕達より先を進んでいるのは賞金首達だったはずだけど、何かあったのだろうか……？

もちろんそんな所に首を突っ込む気はない。
僕達はその気配を避けるべく、経路を考えて進む——

　矛先を虚空へ向け構えた槍を、
　　袈裟懸けに振り下ろしては、返すように振り上げる。
　　　多数の節から成る柄はその度に撓り、鞭の如き軌跡を描き。
　　　　節が擦れ合う連続した金属音を上げ、最後にはまた槍の形へと戻った。