つるりと丸い、紫の珠。
それが幾つも私の手のひらにある。
その珠は濃淡様々な紫水晶で出来ている。透明度の高いもの、内包物の多いもの、少し磨きが甘くて形が歪なもの、どれ一つとして同じものは無い。
いつも身につけていた、紫水晶のブレスレットの成れの果てだった。
私の「力酔い」を抑える為に身につけていたものだったが、個性豊かなビーズはいくら眺めても飽きなくて、結構気に入っていた。
それらを連ねていた紐に鋏を入れたのはついさっきの事だ。

（力酔い）

その単語を思い浮かべて、自嘲する。
果たして私は本当に、酔っていたのだろうか。
自分の身体の境界が信用できなくなってから、私は色んなものに不信感を抱き始めている。
一番信用できないのは、そう、私自身だ。

身体が崩れるときの感覚は、私が「力酔い」と称していたあの目眩とよく似ていた。
酔いすぎると崩れるのか、崩れる前兆を酔いとして認識していたのか、今の私には分からない。
ただ一つはっきりしているのは、今まで通りの対処では効果が薄いということだ。
耳に、髪に、首に、胸に、腰に、「酔いを醒ます」という名を持つ石を身につけるだけでは、最早私の輪郭を確定することはできない。
それならば。

一際紫の濃いビーズをつまみ上げる。
うっすらと赤みを帯びたそれは葡萄酒をそのまま凝結させたようだ。
私はそれを口に運び、鉱物の冷たさを舌の上に感じながら、噛まずに呑み下した。


私はもう、人の身では到底あり得ない事態に陥っている。
それならば、この程度で死ぬ事は無いだろう。

妙にテンションの高い声で言う男。
ごそごそとカエルさんポシェットに手を突っ込んで、やがて小さな包みを取り出した。

今日は先日までよりも幾らか調子がいいようだ。

じりじりと仲間の後ろに移動しつつ

男は何かぶつぶつと独り言を言っていたが、やがて一つ深呼吸をし、声を張り上げた。

声色は明るいが、その声にはどこか不自然さがある。

　＜　　△　　土　▲　　＞
　　\（　?　皿　?）／　　がしゃーん
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　　／│　　塊　　│\　　　　　　　　　がしゃーん
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