「ここでお別れだ。」

高く、低く。哀しげな鳴き声が秋空に消えていく。
ミチエはハーピィとの繋がりを断った。
腕を伝い、指先から血の滴が落ちる。


エンブリオはいくらでも受け入れられるものではなく
人の身にはおおよそ10までとされている。
適性や相性などにより契約したものの、解約されるエンブリオも多い。

ハーピィはこの一揆に参加して、日の浅い頃に捕えて契約したエンブリオだった。
それなりに気に入って、付き合ってきた。
けれど彼女の翼では、もう力不足となってしまっていた。
そのことにはずっと前から気付いていた。
ただ、余力のあるうちは先送りにしてきただけのこと。
ミチエにはもう、彼女をその身に留めておくだけの余力は無かった。

解約自体は何度か繰り返してきていることだが、喪失感はそれなりに大きかった。
そうして、自分がまだそのような感傷を残していることに溜息をついた。
血と名を授けた存在と別れるのは痛みを伴う。
風に乗り、空へと帰っていった彼女がその名をどうするかは知る由も無かった。


狂った調理場の片隅。
呪われた姉妹がくるくると死の舞踏を舞っていた。
倒された仲間の亡骸を軽やかに刻んでいる。赤と黄色の哄笑。

(……哀れな。しかし今の私には余程相応しいのかもしれないな。)

ミチエの影に、彩りが増えた。
死の色がより一層濃くなっていった。