「倦怠こそ敵よ」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　———— 永い永い




「何あれ」

　女王陛下の嫌そうな声に苦笑する。
　現在地は女神の園。女神像と煉瓦造りの水路に美しい花々が映える。
　その中にあってどう見ても——いいとこ森林か、できれば砂地あたりに居て欲しいおぞましい生物がいた。

「トレルケフエクヴェ……呼びにくいわね」
「若い娘を攫って血を啜る怪物、の手下らしいですが」
「……持って行く前にもう味見しましたみたいな見た目になってるじゃないの」
「否定はしません」

　嫌悪こそすれ恐怖はない。見た目の問題というものは根深い。それこそレージェントでもしばしば問題になる。
　そこで擬態なり感覚を惑わすなりの方法を身につけさせてはいるのだが。

「——なんでもいいわ。早く処理しちゃってね」

　美醜以前に不潔は問題である。
　若くも娘でもない私と対峙するこいつは恐らく不幸だろう。
　エレインと、チドリはギリギリ範囲内かもなと考える。

「承知いたしました、女王陛下」

　　　　　　男はそっと指輪に口づけた。