取り合った手こそが陥穽になる。
いつかかあさんが、私のために多くを失い、そして死んだように。

誰かが私に触れる。 私が誰かに触れる。
そうして重なる関係性の中に、どうしても終わりの匂いを嗅ぎ取ってしまう。
それが杞憂に過ぎなくても、胸に膨らむ恐れをどう取り扱うべきかは計りかねた。

私には、あまりに避けがたくそうした恐怖が染みついている。

寄るな、触れるな、あれは忌み子ぞ。
災いの種、禍つ兆し、障りの娘。

私の生まれ持つ重たい枷が、なによりも私自身のこころを縛っている。
この世界では、嵌った枷に繋がる鎖の先に、何があるわけでもないとわかってはいるけれど。

目の前に立った二人を見て、足下がふと、頼りなくなる感触を覚える。

嗚呼。 そんなふうに。 そんなふうに、なれたら。 なれずに。
思考の渦の底から、諦めろという細い囁き。
振りほどくことのできない小さな黒い指が、私の足を縫い止めて。

望まないように、生きてきたのに。
どうしてそんなふうに、私の前に、辿りつけない選択を示してしまうの。

何に傷んでいるのかさえわからない、重苦しくとりとめない胸の痛み。

もうゆるして。 これ以上はもう、きっと耐えられない。
ゆるして。 もうわかったから。 お願い。 お願いよ。

祈る相手を持たないままに、祈りだけが積み重なる。
その重みにまた、押し潰されそうになりながら。

プルは燈子の懐にもぐりこむと、ペチペチと叩き始めた。

ぺちぺち、ぺちぺち。

ぺちぺち、ぺちぺち。