さてさて……。見事な花の庭園よな

昔は差別が元で大きな争いがあったと聞くわ。
でも今はもう、組織だっての反抗は無くなってるとも教えられた。
徹底的な弾圧を敷かれて、自由を完全に奪われてしまったから。

でも、それにもいずれ限界が来る……と思ってる。
あたしの世界の亞人が人間を見る目は……何より、恐ろしく見えるわ、何時だって。

あぁ……あたしの従者もこの世界に来てるのよ。
一緒にこの世界に引きずり込まれたの。

最初は行方もわからなかったんだけど、無事に見つけることができたの。
見つけた時にはもうお互い、その世界を一緒に冒険する仲間が居たから一緒に旅をするのは諦めたんだけどね。
今は手紙で頻繁に連絡を取り合ってるわ。

素敵ね。
私も許されるならそういう旅をしてみたいけれど、まず世界を渡るという手段を見つけるまでにおばあちゃんになっちゃいそう。

だから、リオンが偶然逢いに来てくれる方を楽しみにしてるわ。
その偶然が起こるまでには、あたしの世界ももっと、人と亞人が歩み寄れているようにしておくから。

りーおんっ。はっぴばれんたーいんっ。

チョコレート、リオンのために作ってあげたかったけど、狼チョコレートだめだからねっ。

だから代わりに、チョコレートじゃないけど黒糖でつくったお豆腐ケーキ作ってみたよ〜。

おいしいんだ、お豆腐つかってもっちもち、でも甘さ控えめー。はいっ。

私たちがこれまで戦ってきた王政側の兵士の中には、裏の顔をもつ方がいた、と言えば
良いかもしれませんね・・・。なぜ王が圧政を始めたのか・・・。

真実というものは時に残酷なものです。知りたくなかったと思えることもあります。そういった
ものを乗り越えて行かねばなりません・・・。受け止め方は人それぞれですから、どう処理をするか
が大事なのだと思います。

臣民にとって良い暮らしが、特権階級にとっても良い暮らしとは限りません。利権の問題で
善政が壊されてしまうことが多いのでしょう。

呵々！　寄り添うことの大切さを、誰よりも理解しておるのはリオン、そなたではないか。
困ったり悩んだりしておる時はな、下手に声をかけぬ方がよいことも多いものでな？
むしろ、話を聞いてくれる相手が近くにいる、という心強さの方が嬉しかったりするものじゃ。

愛する人と書いて愛人と読む。本来、愛人とは恋人と同じ意味で使われるべき言葉ぞ？
同様に、ペットと書いて愛玩動物と読む。愛して可愛がるのは、恋人にする行為と同じではないか。
どうも違わぬではないか。だいたい今の世の中、兄妹とか兄弟の恋愛も珍しくなかろうに。

だいたいリオンよ、そなたは硬すぎるのじゃ。余計な線引などせずとも良かろうに。
好きか嫌いか。それで十分ではないか？
種族の壁を越えて愛する相手を自分のものにする。愛人結構、挑み甲斐のある壁ではないか。

命令に従うだけ、本人の喜びも悲しみもない姿は寂しい、と。
……それを、そなたが云うのか？

ふふ。儂も、あの猿共に関しては同意見じゃよ。
与えられた目的、命令以外の何かを大切に逝けたのであらば、本望じゃろう。
自分を棄ててでも守りたい何者かに出会えたというのは、奇蹟のような幸せであろうしな。

お？　云うたな？
確かに大海原の上では何の障害物もないように見えるじゃろうが、洋上戦はそう楽なものではない。
嵐ともなれば船は揺れ、足場はふらつき力が入らぬ。対して怪物は海の全てが足場になるのじゃぞ。

呱々。されどそのわくわく感は理解るのう。
見知らぬ大地ではな、知らぬ匂いを立ち込めた未知の食材に出会うことがある。
最初は怖くて手を出せぬのじゃが、思い切って食べてみればそれは美味でのう！

はは、植物が光をどう美味しく食べているかは儂にも判らんがな！
じゃが儂らとて、自然の中、木漏れ日を受けながら空気を吸い込む喜びは知っておる。
そなたならば、精霊と共にもっと楽しく感じられるかも知れぬのう。

……それは、あまり良くない方向での人生の転換点じゃろうがの。
しかし、価値観が変わるというのは楽しんでみれば面白いものじゃぞ。
自分だけの人生に、突然好きな人が入り込み、共に歩き出す……とかな？

じゃが、身体のなかに精霊を抱えておるのじゃろう？
流石に雄が子供を身籠る話は聞かぬからのう。
男ながらそれを楽しめるとは、素晴らしいではないか。普通は得られぬ経験じゃぞ！

儂の子供か？　居らんな。
正しくは居た、が。だいたいは、戦に巻き込まれて命を落としてしもうたかのう。
血を受け継いで生きておる者は居らん。儂の子は、何故かすべて人間になってしまうようでな。

弱い精霊同士が結びついたり、突然自我に目覚めて実力を身につけたり。
精霊が上級に転位するのは様々な方法があろうな。故に、リオンとは少し違う成長の仕方かも知れぬ。

ほう。……妖怪なれば、珍しいことでもないが。どういう妖怪だったのじゃ？
しかし儂も、自らを振り返れば同じように破滅寸前であったよ。
もう強くなることしか頭に無くなってしまうのじゃ。妖怪は特に、そういう方向に流されやすくてな。

リオンよ、力というものを見誤るでない。
個が力を求めても構わぬのじゃよ。ただ、殴る力だけが強くても敵を増やすだけじゃろう。
心にも力をつけるのじゃ。覚悟であれ、信念であれ。なればこそ、強大な力に振り回されずに済む。

楽、楽じゃと？　冗談ではない。楽ならば今頃まだ神をしておったろうさ。
神を喰らって力をつけようとするの妖物どもや、神格持ちの狐を従えようと狙う術師やら、毎日戦いの連続じゃ。
おまけに地元民どもは勝手な願いを祈っては、叶わぬとあらば唾を吐きかけてくる。
最後の頃は、いかな儂とてノイローゼでいつ反転堕ちしてやろうかと思うておったぐらいじゃぞ！

儂が儂の耳を噛めるわけないではないか。
それに、そなたの耳だから良いのじゃ。いかな儂とて、誰でも良いわけではないぞえ。
ほれほれ。まだちゃんと隠れておらんぞ？　変化を強めにして隠さんと、また噛み付くぞー。

何を情けないことを云うておるのか。
リオン、そなたにはこの儂がついておるのじゃぞ？　
一週間もあれば、九つ同時に結べるように調教、もとい、訓練をしてくれよう。

//よし、ではまずこのチョコをな？　口移しで食べさせる方法から実践しよう。

ほっほう。よく理解っておるではないか？
そう、花粉を飛ばすのは雄蕊じゃからのう。植物もきっとえろい想像をしておるのじゃろう。

………。

話し合いは、したさ。
医師時代は、誠意を持って。しかし政治はそれを許さなかった。
職員時代は、行動を持って。しかし立場がそれを許さなかった。
絶望的な意識の違いが、会話をうまく交わすことをさせなんだ。そういう世界だったのじゃ。

そうかや？　リオンよ。己の立場を一度忘れて、よう思い出してみよ。
人と仲良くしていない獣人を、何人見かけた？
儂はな、この世界の彼らの交わりは、あの男がかつて抱いた理想そのものではないかと思うておるよ。

あの組織だけが歪なまま残っておるようじゃが、の？

…さぁ、どっちだろうね。
…元々の僕は『人の知りたがる叡智』のイメージを具現化した存在。
それは本という形をとって。
時に人に読まれることもあった。
でも、『人の知りたがる知識』は、えてして『禁忌』だったのさ。

…魂の法則を変える術。
…生命の複製を創る術。
…世界の間に世界を創る術。
…死を越える術。
…全世界の記憶を変える術。

僕自身が、多分、他人のためにその知識を求めた時、
僕は堕ちて元の役割を負うことは出来なくなった。
…さて、僕は『叡智の書』たり得るのだろうか。
………ね、リオン。

…まだ君の物語は続いたままなんだね。
そう、それじゃあ、まだまだ君の物語は楽しめそうだ。

黒リオン君も自分で物語を作っていかないとっ！

え…。
んー…あまり、そう言うのは考えた事が無かったかなぁ…・。。。
読み手のつもりだったからね、元々は。

それじゃあ、はじめましょうか

この戦いの先に、あの組織に鉄槌を与えるモノになるというのなら、私は、勝たなくちゃいけない。
……私の事を頼ってくれるあの子たちの為にも

そこな者、都合もあろうが少々相手を頼むぞよ。

……大丈夫。必ず勝って君のためのネクターを手に入れてあげる。