ふん、といなすように軽く鼻を鳴らし。

　どこか似たような寂しさを感じたのではないか、と狐は思う。
　最初に出会った頃の仔狼も、見事な作り笑いの裏側に、昏い死の影を背負っていた気がするのだ。
　それが今や、「独りではなく皆で食事をする方が良い」と口にするまでに変化を遂げた。
　かつては演技だったものが、いまでは本心から言えるようになったのではないだろうか。

　儂も精霊は専門外じゃから何とも云えぬが、と唸りながら。
　相入れぬ力が無理を生じさせ寿命を短くさせているとしても、即死ではない以上、なんらかの手がかりはあると踏む。

　背に毒剣を隠しても歩み寄れるがな、と混ぜ返してもみせるが、彼もちゃんと理解しているだろう。
　今はリオンが、自身の心を言葉に換えて再確認することに意味があるのだと思う。
　それは彼が誰かに使われるスパイではなく、自分で考えて選んでいける個人だという自信につながるからだ。

　伸びた蔓が腕に絡みついていく。一瞬だけ、行動力を奪われる錯覚にとらわれたが理性で潰して我慢した。
　ただ、淡い新緑の輝きが生まれた頃には「ほう」と自然に一息をついた。
　妖力に換えやすい金気ではないが、森羅万象の力が自分の身体を温めてくれたように感じたのだ。

　元々は攻撃力や諜報力を高め、失わせない為なの施術なのかもしれない。
　でも、狼の本質に沿い、生きる為に施した仕掛けだと思えば、たいした気遣いだとも思えたのだ。

　指摘しないほうがいいだろうか、と若干悩みを見せつつも。
　彼は考えて先に進んでいく質を備えている。小狼の成長をみてきた自分の眼を信じてみることにした。

　遠くの空をみあげる小狼に、小声で囁いた。
　聞こえていないかもしれないが、それはそれで構わなかった。

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ハロウィン当日には下記のお菓子が振る舞われます。

【星空パンプキン】
香ばしく焼けたカボチャ生地のケーキ。
上に星々を模した小さなキャンディ屑が散りばめられている。

舞い上がる花びらは、あっという間にいずこかへと、風とは違う、何かにとって各地へと。
そのうちの数枚はその場へと残り、リオンの周囲をくるくると舞い続け。それでも、ゆっくり、ゆっくりと地面へと落ちていった。

彼が呼ぶ語りかけに。
その花びらから、というわけではなく、花々からでもなく、空でも、地面でも、何処からでもなく。
けれど声は彼に応じる。
幼子のジュリと、はじめに出会った頃の樹里の声が混ざり合ったような響きで、彼に応じるだろう。
けれど、……応じる、声を届ける、聞く事ができる以外は何も見えてはおらず、触れる事も出来ず。

その存在は、あくまで、この世界の物体に干渉する媒体を持たぬ、意識だけのもの。