休息を兼ねたピクニック。弁当を広げ、水筒に飲み物を注ぐ。

揺れる木漏れ日に誘われでもしたのか、蝶々が一匹、裏返しに置いた弁当の蓋の上に降りてきた。

冗談みたいなのどかさに、アマドはすこしおかしく思えて、フフッと笑った。

ガルボに手伝ってもらったおかげもあり、お弁当は色彩豊かに彩られている。容れ物は、ミヤコが素材を紡いだものを、ブルーノが鍛えたものだ。

不思議と調和のとれた綺麗なそれは、まるで手入れの行き届いたこの庭園の縮図のようだ。それかもしくは、戦いを共にした４人だけの、箱庭かもしれない。

アマドはそのカラフルな箱庭を手に取り、自分の膝の上に置く。そして静かに動きを止めた。目はまっすぐ、箱庭を見ている。

そこに暮らす人を想像するかのように。

「俺は……」そこで不意に、口をつぐんだ。居心地の悪い沈黙。

アマドはわかっていた。手にしているこの小さな箱庭一つとっても、いつまでも残してはおけないことを。

これからの皆の未来を、誰が予想できるだろう？

それぞれには、それぞれの人生がある。だからこその、４人じゃない。３人でのピクニック。それもわかっている。

アマドにとって、それは今はない勇気だった。

今はない、とても大きな勇気のいる言葉。

彼はその勇気のなさをこれから先、後悔するかもしれないし、そんなこと考えもしないかもしれない。

「これからも、一緒にいられないかな……？」

アマドは言えなかった言葉を、箱庭からすくいあげたサラダと一緒に咀嚼して、呑み込んだ。

ゆっくりと背伸びをする。
ふとガルボの弁当箱をのぞき見する。

びっくりした顔の後、微笑むアマド