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「が……はっ…」
血が喉を焼く感触とともに意識が戻る。無理をし過ぎたか。体がひどい状態なのがわかる。
そばでルーシーが喚く声が聞こえる。霞む視界でパッチーを探す。無事だ。
こちらに視線に気づくと、のんびりした動きで歩み寄ってきた。

ここ数日は自分でも動いているのが不思議なほどの状態だった。
無理を押して軋む体を動かしてきたが、ついに戦闘中に意識を失った。自分がどう動いたのかもわからない。
体を起こそうとしても、腕に力が入らない。
（……流石にもう…限界かもしれねぇな）
そんな思いが一瞬、頭をよぎった。その時。

「そうですね」
隣で喚いていたはずのルーシーが、突然冷ややかな声で言い放った。
それと同時に、自分の左腕が信じられないほどの早さで動き、傍らにいたルーシーの頭を鷲掴みにした。
「え？」
乾いた木板が割れるような音を立ててルーシーの頭が砕け、星形の模様の入った目玉が地面に転がった。

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何が起こった？自分の腕が意思に反して動き、ルーシーを…少女ドールを破壊した…
「……え？」
（オレか？今のは…オレが…？）
頭のないドールの向こう、パッチーに目を向ける。
パッチーは、何か得体の知れないものを見るかのような目で自分を…いや、自分とルーシーを見ていた。

「「アハハハハハハハハハハハハハ！」」
頭のないルーシーがけたたましい声で笑い始めた。
「「やっと、やっとこの時が来た…！」」
「「ずっと待ってた！この時を！お前が諦めて…心が弱る一瞬を！」」
アルムは必死に状況を飲み込もうとする。だが、頭が追いつかない。パッチーを呼ぼうとした。だが、声が出ない。
その時、アルムはこの耳障りな声が、ルーシーと自分の口、両方から同時に出ていることに気がついた。


突然、視界が真っ暗になった。アルムは、自分がどこか深いところへ落ちていくような感覚を覚えた。

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細い体がゆらりと立ち上がる。
左目は髪で隠され、見開いた右目から流れ出る血が半身を伝い、赤黒く染め上げていく。
少女は牙を剥き出し、先ほど自分達が仕留めた獲物を見て笑みを浮かべた。

道の悪さは、軟体にとって関係ないようだ。

　　　　　　──人もをし　人も恨めし
　　　　　　　　　　　あぢき　　　なく
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　世を思ふ故に
　　　　　　　　もの　　　　　　思ふ身　　　は───