『本』は空を飛ぶことが出来る（イオナの属性のせい？）が、力を消耗するからと、普段は、誰かに持ってもらっている。
イオナ本人であることもあるし、エンブリオの誰かが持っていることもある。

そして、エンブリオの中で『本』を持つ回数が圧倒的に多いのが、『本』に最初に話しかけたエンジェルだ。

『何か　隠していませんか？』

周りに誰もいない時、エンジェルは『本』にそう尋ねた。

『何のことだ？』

表情が無いというのは、こういった時有利だ。
無機質なその文章からは、動揺はまったく感じられない。

『イオナ様に　全てを答えていないのでは？　ということです』

エンジェルも普段から声の抑揚をあまりつけないで話す。
まるで人形のようだと、誰かが言ったとかいないとか。

『そういうことなら、答えは”はい”だな』

『本』はそれをあっさりと認めた。
そして、続きを綴る。

『そもそも、俺は質問に答えるためにいるのではないし。
意識がある以上、意図的に情報を遮断することもある。
そして、理由は書けない』

『書けないのは　何かの強制ですか？　それともあなたの意思で？』

『後者だ』

『……私　考えたのですが　あなたの元になった方』

エンジェルは『本』を持つ手に力を込める。
壊れはしないが、圧迫感は感じるのではないだろうか？

『初め　イオナ様のお父上ではないと　おっしゃっていましたが
……近しい人　ではないのですか？』

『その言葉はいろいろな意味に取れると思うんだが、一応、間違ってはいない、な』

『認めますか？』

『キミがどう考えてるかわからないが、認める』

『……そうですか』

『ついでにキミには知らせておこう。彼女のエンブリオの共通点』

『私達　の？』

『キミ達は……』




ここでの会話はすぐに消去されて今では『本』に残ってはいない。