「……と、まあ、とてもスムーズ且つつまらない展開になりつつあるんですが」
一人の人間はただ、語り続ける。
「戻ったらそれはそれでハッピーエンドなのでしょうか、小さな主人が逞しく成長してとても喜ばしいことではあります」
大げさに両手を広げ何処に向かうことなく、話は続く。
椅子に腰掛け、口を開く。
「そうしたら立派な主人として、あの従者は必要なのかどうか」
「実験台がぬいぐるみでなければ、他に面白そうな実験はリリスの女性となりますが」
くっくっ、と小さく笑いながらどれを試そうかと、
まるで子供が欲しい玩具を選ぶように、
他の可能性というカードをいとも簡単に選択されようとする。
「さてさて、どう転ぶのが面白いでしょうか……他の方の行動を見て選択するのも悪くない」
語り部は立ち上がり、椅子は蹴飛ばされ何処かへ消える。
靴の音が響き渡り、最後に会釈を一つ。

「それでは、続く限り展開されるであろう物語を引き続きお楽しみ下さいませ」

ぼそりと呟かれた言葉にドスの利いた声が返ってくる。

きっぱりばっさり。

ぴく、と肩を震わせる。小さな幼児から子供に戻った姿。ちょっと大きい、確かに大きくなった。

顔を真っ赤にして、ぺたんと座り込んだまま視線は右往左往。

不意に、迦楼羅に影響が恐らく出ない程度の胞子がぼふ、と爆破した。
戻った姿を一瞬視止めた時には、偽の姿も変わっていた。
あなたがきょとんと辺りを把握、認識する間に少女は女性に戻っていた。

座り込んだまま、そう呟いた。
また、大きくなった。

そう言ってデルタは虚空に向かって小さく、シルフィード、と呼んだ。

微かな風と共に、透けた羽を持つ妖精は迦楼羅とデルタの間に、ふっと現れた。
大きさは大人の手のひらほど。

同時に、学術的にとても興味深い、とつぶやきながら頷いた。

奇妙なものだよ、エンブリオは。
吐息混じりにそう零してから、迦楼羅とポプリを見返す。

呟くように言った。

欲望丸出しなためか、赤面したままぽつぽつと語っている。
そして口調や態度の違いを指摘されれば、その表情は更に困惑の気に染まってしまう。