そう言って飛ぶ力をなくした蝶のようにフリエは地面に落ちていった。


倒れる彼女に銃口を向けるが、既に彼女の顔からは戦う意思がないことが分かりアステマ・ファムを短剣の姿に戻した。

『退行』『加速』がかかったモノなど、基本はすぐ腐敗してしまい存在することはない。
だけどアステマ・ファムは原初へ還るまでに時間がある為、可能だった。

きっとお父様は帰還命令で自分が死ぬことを分かっていた。
だから自分の代わりに『守ってくれ。』なんて・・・。

お父様の愛で、心が溢れるように目から大粒の涙が零れた。

私は短剣の姿をしたアステマ・ファムを彼女の胸に突き刺した。

フリエとアステマ・ファムが光に包まれた。

儀式が完成し彼女に近づくより早くアステマ・ファムが原初へと還っていく光の柱に遮られてしまった。


手には彼女が帽子に付けていた羽飾りを掴んでいた。
ぎゅっと胸の前で握り締め、私は光の柱をじっと見つめた。



——見届けないと・・・。



——私は沢山の人を犠牲にして漸く此処にたどり着いた。



——マハンの里の人々、お父様、フリエ。



——だから私は『前を向いて』最後を見届けないといけない。



——それが残された私の義務。






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それから何時間たっただろうか。
光の柱が徐々に収束していっていた。

もうすぐアステマ・ファムが原初へ還るのだろうか？



そう思っていると光が収束し、一つの塊となった。

塊から強い光が放たれた。




















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ジージージー。

季節は夏、蝉が鳴き今日も日差しは暑かった。

グレーテルに手を引っ張られるままに連れて行かれた。

今日は外で食事しようと言う子供達の提案があったからだ。


簡易だが、外にパラソルのようなものを立て日差しを避け、それでも暑いが天気のいい日に外で食事というのは何だか気分がよく思えた。



本当に数日前の事が嘘のように、とても平和だ。










——アステマ・ファムの破壊が確認され、エリス・セーレ＝サタナエルの粛清は取り消された。

——それにより、八公爵サタナエルの名は正式に抹消となり、妖魔の歴史上からエリスは消された。


——コーネリア領はアスモデウス直下に置かれる事となったが、その後の事はわかっていない・・・。











私はというと・・・。

原初をみたことにより、目は焼ききれ失明。
その後、ヘリヤの異変を伝える為にきたレイチェルによって保護された。

もちろん原初をみることでどうなることかは分かっていた。
だけど、私の意思で最後まで見届けないといけない。そう思ったからだ。


不自由はあまりしていないが、グレーテルがお姉さんになったように色々するようになってしまい、少し困惑している。








食事を終えた後、グレーテルの手に引かれアレクサンダー・イブリスが眠るお墓の前にきていた。

この世でたった一つの彼女の存在を証明するフリエの羽飾りをお墓にそっとそえた。

彼女達からの返事だろうか、そう言った後にさーっと冷たく心地よい風が吹いた。

彼女は重々しい聖書を構えた。