<Days25>


「ふんふんふーん」

　私はどこか浮ついた心で、今日着ていく服を選んでいた。

「うーん、これかなぁ？でもちょっと派手……だよね？」

　ただ一緒に友達と町に遊びに行くだけなのに、妙に気合いが入ってしまうのが自分でも不思議ではあったけど、それでもそう思ってしまうのを止められなかった。

「やっぱりいつもと違うのは、変に思われるよね……」

　私はそう言って手にしていたワンピースをハンガーに戻すと、いつものブレザーに手を伸ばした。


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　着ていく物に悩んでいた私が約束の場所に着いたときにはすでに約束した相手であるルシエ・ソルブランシェが先にそこで待っていた。
　私は彼女の姿を見つけると慌てて近くまで小走りで向かう。

「ひょっとして待たせちゃったかな？」

　私は一人待ち合わせ場所に立っていた彼女に声をかける。

「ううん、大丈夫、私も今来たところです」
「そう？だったら良かった。待たせたら申し訳ないし」
「大丈夫ですよ」

　彼女は小さく微笑みながら、そう答えた。
　私はその彼女の微笑みが、どこか儚げで、今にも消え去りそうに思えてしまった。

「ルーシェ……ちゃん？」
「どうしました？」
「ん……、なんでもないよ」

　問い返ししてきた彼女に私はそう答える。
　そして、ふとそう思った理由が何となくわかった気がした。

「ねぇ、ルーシェちゃん？ちょっと思ったことがあるんだけど」
「思ったこと……ですか？」

　キョトンと私のことを彼女は見つめてきた。

「うん、、今のルーシェちゃんの服もさ、なんか清楚で凄く似合ってると思うんだけど……」
「は、はい」
「もうちょっと違う雰囲気の服も似合うと思うの、だからその、せっかく色々見て回るんだし、ルーシェちゃんの服を選んでみたいなって思うんだけど、どうかな？」
「私の……ですか？」
「うん、ダメ……かな？」

　私の申し出に彼女は驚きの表情を浮かべて戸惑っているようだったが、小さく頷いた。

「はい、喜んで」

　こうやって私とルーシェちゃんの休日が始まったのだった。


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「やっぱり、流行ってるだけあって美味しかったね」

　少し遅めの昼食を取った私たちは小さな料理屋を後にした。
　デザートが評判で若い人に流行っているというお店で昼食とデザートを堪能した私達はこれからの予定を話し合った。

「この先にブティックが結構あるんだ、さっきの約束これからでいいかな？」

　私は彼女の手を取って微笑んだ。

「そうですね、いいですよ」
「じゃあ善は急げ、だね」

　私は彼女の手を取ったまま走り出し、彼女も慌ててついてきたのだった。

「色々あるんですね」
「そうだね、服って言ってもたくさんあるからね、それの数だけお店があるよ」
「あまりこういう風に見て回らないから……どきどきします」
「ルーシェちゃんってあまりこういう所色々見て回る感じじゃないもんね」

　私は彼女に似合いそうな服がないか、ショーウィンドウを見ながらゆっくりと店の中を歩いて行く。
　その中でふと一着の服が視界に止まる。

「ルーシェちゃんここ、ここに入ろう」
「え？あ？は、はい！！」

　先に入った私の後を彼女は追いかけて店に入ってきた。
　店の中は、いわゆるロリータ系の服を多めに扱っている店であった。

「ルーシェちゃんこれ！！これ！！」

　私はショーウィンドゥに飾られている一着のワンピースを指さした。
　その服は白とピンクを基調にして、フリルで飾られた、短めのスカートのワンピースであった。

「これ……ですか？」
「うん、これ、きっとルーシェちゃんに似合うと思うんだ」
「え、えーと……」

　予想していなかったデザインに彼女は思わず言葉を詰まらせるが、私はあえて無視して店員さんに声をかける。

「あの服を試着してもいいですか？」
「あ、はい、あの表に出してあるやつですね？」
「ええ、私じゃなくて彼女が、なんですけど」
「わかりました、準備しますから少し待ってくださいね」

　店員さんは手早く服を持ってくると、ルーシェちゃんに服を手渡し試着室へ案内する。
　異を言わさぬそのことに呆然としながら、彼女は試着室へと入っていった。

「……ど、どうです……か？」

　おそるおそる試着室から出てきた彼女は予想した以上に、服がよく似合っていた
　思わずそれに言葉を失った私だったが、彼女の言葉で我に返る。

「祀さん？」
「あ、よ、よく似合ってるよ。似合いすぎてびっくりして言葉が出なかったくらい」
「そ、そうですか？」
「うん」

　その頬を染めて恥ずかしがる彼女を見て、私はなぜか嬉しくなって、店員さんに声をかけた。

「あ、あの服ください、支払いは私が、あと包まないでいいです、このまま着ていきますのであと、横にある色違いのももらえますか」

　横に並べてあった黒とピンクの色違いのドレスを指さし、てきぱきと私が決めてしまっている事にルーシェちゃんは、わたわたしながら見守っていることしかできなかった。
　会計を済まして店を出るとルーシェはもじもじと恥ずかしそうとしていた。

「こ、このスカート短すぎませ……んか？」
「そんなことないよ？よく似合ってるから大丈夫。それ言ったら私だって同じデザインの服を着てるんだし変なことないって」

　彼女の型に勇気づけるように私は手を置いた。
　その言葉に彼女は、まだその頬を染めながら小さく頷いたのだった。


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「今日は色々あって疲れたね」
「そう……ですね」

　日が沈み始めた人気の少ない街角で私達は一休みしていた。
　あまりこうやって町を遊んで回るということは慣れないのか彼女の声はどこか力がなかった。

「ひょっとして迷惑……だったかな？」

　私は心配になって彼女の顔をのぞき込む。

「そ、そんなことないですよ。楽しかったです……あ……」

　私はふらついた彼女を思わず抱きとめる。
　そして期せずして、吐息がかかるくらい近くなった彼女の顔にどきどきしてしまう。
　思わず私は言葉を失ってしまうが、彼女の瞳に魅入られるように見つめてしまう。
　そして彼女を抱いたまま、私の唇が彼女の唇に近づくとそのままゆっくりと重なっていった。
　どれだけ時間がたっただろう？一瞬にも永遠の様にも感じられた、気がつくと重ねていたその唇の感触に我に返る。
　真っ赤になって、その体を離した私は、彼女のことを見た。
　何が起きたのかわからず驚いた彼女は真っ赤になって、ただ黙って私のことを見つめていた。

「あ、あの……ごめん……」

　謝らないといけない気がして私は彼女に自然と頭を下げていた。
　彼女はそれに対してどう答えていいのかわからず戸惑っていた。
　しばらくそんな状態が続いていたが、彼女は小さくこう呟いていた。

「嫌じゃ……ないから……」

　その言葉に私ははっとして、思わず彼女のことを抱きしめていた。
　彼女は緊張したのか、一瞬体を強ばらせたが優しく私のことを抱き返してくれた。
　その彼女のぬくもりが、私にはとても愛おしく感じられたのだった。
　私と彼女はどこかはにかむような笑みを浮かべるとどちらかともなく、手を取り合ったのだった。


TobeContinued……

今回の日記はルシエ・ソルブランシェさん(2010)をお借りしました、感謝！！

そういうとふわりと浮かべた氷を近づける。
その氷は赤く燃えており、冷気を発していた。

もじもじしながら出してきたものは、棒の先に平べったくて丸い飴のついた…
手の平の半分ほどの大きさの、所謂『ペロペロキャンディー』だった

申し訳なさそうに差し出してきた

ルーシェはとても嬉しそうにしています。