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少し、日が隠れかけた頃——


景色も変わらない森の中にを進む。
変わりもないこの景色は新たな人影も落とさない。

彼を探して飛びこんだのはいいものの、未だに見つけられてはいない。
街へ行けば、ある程度聞けるとも思ったが有力な情報はみられない。

……あの子の力を使えば見つけられるかもしれないが、
同じ場にいるせいか、繋がりにくくなっている。

それに、彼女も無理矢理ついてきている。
離れる訳にも、下手に行動する訳にもいかない。

仕方がなく、地道に進んでいる訳だが……


「そういえば……」

「？」

「あのときは、ドタドタしてて色々と聞き忘れてたけど……
　どうして、無理矢理ついていたのかなって……」


ずっと思ってた疑問をふと投げかける。

あの世界では『異世界』への移動手段はまだ未開発な点が多すぎる。
自分がもつ手段でもある程度、改善されているものの未だにリスクが高い。

そんな危険なことを彼女にはやらせたくなかった。

が、どんなに拒否しても諦めず、最終的には無理矢理飛びこんできた。
……そこまでして、どうして彼に会いたいのだろうか。

彼女はしばしの間のあとに、ポツリと呟く。


「……彼にどうしてもしてやりたいことがあるの」

「どうしても……？」

「どうしても……」


そこまで紡いで、彼女は急に目を輝かせる。


「どうしても、ジャーマンスープレックスをしたいの！」

「…………はい？」


思わず、聞き返す。


「ジャーマンスープレックス」

「…………おかしいよ、それ」


なんで、そうなる。
無理矢理飛びこんできた理由が、無意味（？）な暴力であることに呆れる。

呆れつつも彼女を見ると、この世界に来てから初めて目を輝かせてる。
めっちゃやりたそうな目をしている。

思いっきり握りこぶしを出して、キラキラした目で続ける。


「それが"愛"というもの……じゃない？」

「よく、わかりません……」


彼女がいう『恋』って一体なんなんだろう。


そんなこんなで、景色も変わらない森は暗闇へと落ちていく。

今思えることはただ一つ。





…………とりあえず、逃げろ。先生。

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