——いつかの話———

過去は変えられぬと、おぬしは思うかや？
わらわは、変えられると思う。

じゃが、過去を変えようと過去に触れた時点で、それは今になってしまうのだと、わらわは思う。

おぬしが時間を遡る力を得たとしよう。
おぬしがわらわを見つけた——わらわがおぬしを見出してやったのじゃがな——その瞬間に戻り、過去のおぬしがわらわと出会わないように細工をしたとする。

例えばの話じゃ、例えば！
そう怒ったような顔をするでない。

おぬしが過去に戻って、過去の自分を連れ去るでも、わらわを他の誰かにつかませるでもなんでもよいが、そういう細工をしたとする。
その細工をしているのは、今のお主じゃよな。
過去に戻っている間にも、おぬしの時間は流れている。
過去に戻っている間、おぬしが成長しないということはあるまい。成長しないということは変化しないということじゃからな。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。