ふむ、ふむ、これがエンブリオかや。
契約によって契約者に力を与え、契約者の望む形態を取る。

なるほど、わらわによく似ているのじゃ。
あるいは、わらわがエンブリオに似ているのかもしれぬな。
あの世界の精霊にも似ていた。
エンブリオ、精霊、わらわ。

わらわ達のようなものは、それぞれの世界にありふれているのかもしれぬ。
そう思えば、わらわは一人ではないのだと思える。

安堵する気持ちもあれば、少しさみしい気持ちもあるのう。
わらわは所詮、多くの中の一つなのじゃ。

わらわが何者か、わらわ自身がわからぬということも、わらわ以外には関係のないことなのじゃ。

そう、関係ないのじゃ。

関係がないが、関係を作ることはできる。
あやつのことをわらわが探すのも、わらわとあやつとの間に関係があるからなのじゃ。

あやつも、わらわが何者であっても、わらわののことを探してくれているようじゃ。

わらわがわらわのことを知っていたら、誰かを探すこともなかったかもしれぬ。

　そっと、熱いお茶を差し出し。だが呆れたように、少しだけ楽しそうに告げた。

のろのろと顔を上げるクラガの腕から赤黒い焔が立ち上る。それは獣へと姿を変え、具現化した。