──地下牢で、ラズロとかいう司祭を下した後


ちらと地下牢を覗いた限り、ぐったりとした様子だったので多少心配もしていたのだが、どうやらただ気絶していただけだったようだった。

ラズロ戦の物音で覚醒したらしいその男との再会は、所謂感動的なものとは程遠く、ただ淡々と、お互いに生きていたのかと感想を口にしただけに留まった。
まあお互いらしいといえばらしいのだろう。


かくして、1月近く離れていた上司、アリスとはようやく再会するに至った。

何でも向こうもこちらを探して彷徨っていたらしい。
俺もそうだったけど、他国の人間が捕らえられるのならば、城の地下牢ではないか、と当たりをつけてここまで辿り着いたそうだ。
ネクターの入手も、そもそもエンブリオという概念もよくわからないままで、生きていられたのは余程の強運だと思う。
……まあその強運も、地下牢にたどり着いた矢先に潰えたようだが。
そのまま兵士に見つかり、自分が地下牢に入れられたというのもなかなかに間抜けではある。
本人はここにいたらお前も探しに来るだろ？ってどや顔してたけど。

以前、すでにここには来ていたし、そう何度も来る予定があったわけでもないんだがとは言わないでおこうと思った。



さて、再会したはいいものの、当然ながら、アリスは武装らしいものは取り上げられていたし、作れる素材もなければそもそも戦闘に向かないという本人の言もあり……正直いたところであんまり役に立たないことはよくわかった。
まあ、幸い本国との連絡はちゃんととれているようだし、帰路の確保ができただけでもよしとすべきだろう。

一度本国に帰ることも検討したらしいが、結局はメルンテーゼに留まり、こちらにすでに来ているらしい依頼人を探せとのことだった。
本来の合流予定は大分過ぎているものの、契約した以上筋は通せとのことだった。
契約金については完全にこちら側のトラブルとして諦めるしかないだろうが、確かに直接合って謝罪くらいはしなければならないだろう。
といっても依頼人のことは何も聞かされていないので、細かい処理についてはアリスに一任するしかないのだけど。



そんなわけで、今後の予定は決まった。
一度城を出ないことには始まらないわけで、とにかく地下牢を離れ移動してみたはいいのだが……。


──相変わらず道に迷ったようだ。


城外を目指していたはずが、どうやら内部へ踏み込んでしまったらしく、しかもここはどうやら……兵士の住居？のような場所らしい。
一揆の進行ならともかく、今一番行きたくない敵の巣窟に何をどうして踏み込んでしまったのやら。
あまつさえ、追手なのかただたまたまなのか、また面倒くさそうな新王側の手先も出てくる始末だ。



とりあえず、依頼人に会うより先に、ミツ達と合流して、大まかな地理を教えてもらった方がいいだろう。