人気のなくなった夜の海はただただ静かだった。
月明りのおかげでさほど暗くは感じない。
ぼんやりと散策するには丁度よさそうだった。

一揆参加の傍ら、人が集まりそうな場に足を通わせてはいるが、未だに探し人の手掛かりは見つからない。
はぐれた場所は森だったが、改めて話を聞けば、危険な野生動物が跋扈する場所らしい。
装備やエンブリオが揃いつつある今でこそ、行こうと思えば行ける場所だが、当時の自分達には難所以外の何物でもなかった。

それでもアリスは生きていると思えるのは、くぐった死線の多さ故ではあるかもしれない。
まあ、実戦は自分で、彼は基本的にサポートが仕事なのだが。

へらへらと軟派な印象の男ではあるが、裏への根回しやら情報操作やらと、割とそちらは信用できるだけの腕前であったはずだ。
依頼人と出会う前に襲われたのは想定外といえばそうだが、まあ、ただで死ぬ奴なわけはない。

……そう言い聞かせなければ不安になる程度には、焦りが出ているといえばそうだけれど。

そう言って微笑んだ後、嬉しそうにギルベルタの方へ走っていった。
どうやら報告するつもりのようだ

左目から小さな青い鉱石を取り出してみせ。