「……流石に、そう何度も使うものじゃない、か……」

「お疲れのようだの。我が主よ」

声の方を振り向くと、蒼い瞳の白虎がてしてしと歩み寄って来ていた。

「——スノウか。珍しいな、何か用か？」

「なに。観察の結果、変調を来しつつある主を気遣ってみようと思うただけのこと。
　もふもふして安らぐが良い。にくきゅぅぷにぷにも許可するぞ？」

「今はそういう気分じゃあなくてな。気持ちだけ受け取っておこう」

「そうか。ならば、我からはひとつだけ。
　——汝に宿りし黒の力。以前よりも濃くなっておる。
　新しき焔は相容れぬ存在を混ぜ合わせたもの。使えば使うほど調律は乱れる。
　その力に取り込まれぬことのないよう、ゆめゆめ忘れなさるな」

「……？　それって、どういう——」

「さて、の。全ては我の妄言かも知れぬし、何かの言の葉の引用かも知れぬ。
　時 ‐クロノス‐ が満ちれば、《黒き焔》 ‐フラムベルク‐ は自ずと見えてくるであろうよ」