——王都ロフォスの攻略は、思った以上に簡単に成し得ると思った。
良いか悪いか、私も襲撃にも慣れてきたし、魔王としての力を理解して来た。
……何より。殺す事に躊躇いを感じなくなっていった。
私は既に、掛け替えの無い二人の仲間を殺してしまったのだから。


「……攻略はどう？」

老魔物へと尋ねる。
彼は満足げに、大きく頷いて。

「順調です。城に張られた結界も魔王様が上書きした結界で覆い潰せましたし…。
　そうなれば、後は影の魔物や転送された魔物が暴れるだけですから」

「…殺すな、という命令も無くなったしね」

「……。そうですな。……ですが魔王様、あなたの…」

「ええ、それは徹底して頂戴」

「言われずとも」

焦りはあった。既に彼は死んでいるのではないか、という想いも強かった。
死体であっても、また会えるのならそれで良いと己に言い聞かせてはいたけれど、ディラックまでいなくなる事は、私には到底耐え難い事だった。
それに、もし助け出す事ができても、二人の死を知ったら彼はどう思うだろうか？
そんな恐怖が心を衝く一方で、もしも生きてディラックに会う事ができたら。
もしも一緒にいる事を了承してくれたら——。
そんな幸せの夢想を、止める事ができない。

ここに来て、今更私は迷っているのだろう。
助け出した後の事が目に見えてしまった事で、後に対してあれこれ考えてしまうのだ。
隙だらけだと、我ながら思ってはいた。
だからしつこいほどの状況確認をして、この隙を可能な限り潰そうとする。
万が一にも失敗は許されない。下手を踏む事は絶対にできないのだ。

私は何度目かの状況確認をする為、魔法を詠唱し、城内の戦場を見渡す。
戦局は圧倒的に私達の側が有利で、彼等は虐殺される肉塊に過ぎなかった。
武装したオーガが突撃をする背後で、サキュバスが兵士を幻惑し、状況を打開しようとする魔法使いをシャドウが急襲。
戦場を駆けまわる伝令兵と衛生兵を、無尽蔵のスタミナを誇るヘルハウンドが狩り尽くす。
弓兵達は、空中にいるワイバーンやグリフォン達の相手に手一杯で城内にまで手が回らない。

報告通りの優勢。敵兵は練度こそ高いが、連携を崩されながら立ち回れるような一騎当千ではない。
中にはそれでも強い奴というのはいるが、此方が連携を取って攻めれば５分と持たなかった。

やはり玉座にまで赴き、王を締め上げて居所を吐かせるべきか——。
そう考えたところで、探索の魔法が突如、途切れた。

「……！？」

魔力切れでは無い。解除させられたのだ。強制的に。
それも魔法ではなく、恐らくは魔法の武器による効果で。
だが、厄介な連中は事前に確認してあったし、その彼等も探索の魔法を掻き消せるような余裕も、実力も無いはずだ。
では、いったい誰が…？

訝しむ私の前に、ワイバーンに乗ったゴブリンが大急ぎで駆け付ける。

「伝令ッ！　魔王様、突如として第三隊が壊滅しました！！」

「……なんですって！？」

第三隊。つい先程まで私が探知の魔法で見ていた部隊だ。
切断されてから、３分と経っていない。

「敵は！？　何人いて、その内訳は！？　分かる限り正確に報告しなさい！」

「敵は……敵は、２人！　黒い鎧に全身を包んだ、騎士！　そして…賢者ヴァナガンド！」

「…………先生と…黒騎士…」

「魔王様、御出陣を！　アレは、我等の手には負えません！」

それだけの実力を持つ騎士がいたなど、私は聞いた事もない。
それに、今まで出て来なかった師匠が出てきたというのも気にかかる。
オマケにこれだけ瀬戸際になってからようやく動かすという事は、使う際に使用者も壮大なリスクを負う切り札であるという事に他ならない。
恐らく師匠はその調整役で、今までは調整に手間取っていたのだろう。

「…………」

城に視線を向ける。
師匠とは決着をつけなければならないだろうと思っていたから、望むところだ。
切り札の黒騎士諸共、討ち倒して、ディラックを救う。
…今はそれだけを考えよう。

「……行って来るわ」

「お気をつけて。行ってらっしゃいませ」

私は己を第三隊のいた場所へと転送させる。
——そういえば、師匠の転送魔法で、私の人生は大きく変わったんだっけ。
それが良い事なのか、悪い事なのかは、まだ分からないけれど。
良いものにできるように、がんばろう。
喩えその為に、師匠を殺める事になったとしても。

なんだか変な目で見られた気がする

可愛いは何より大事。これ正義である。

なんかわかったらしい。こちらの魔王もかつては戦闘狂の頃があるにはあったと言うが。

こんな風でもベルンハルデは魔王としてではなく、
ヒトとしてのフィーグルをなんだかんだで高評価しているようだ。
これほど意思をちゃんと持っている存在も今では珍しくなってきたな、とか思いながら。

例えば杖にしても、こーゆうシンプルなレベルがいいと思うのよね？
と言いながらルビーのような宝石がついているだけのシンプルな杖を取り出して見せる。

http://nazr.in/Qcm　

　何かしらの理由があろうことは予想していた。
　しかし聞かされたそれは、思っていた以上に重く。

　以前話した、散った命への互いの見解。それには彼女の仲間達のことも含まれていたのだろうか……

　死ねと言ってるようなもの。その言葉にには頷きを返した。

　その辺の獣を調教するのとは訳が違うことだろう。今更言い聞かせるくらいなら、後手になったとしても、雑用係に任せた方が労力は少ない、かもしれない。ただし……

　その環境下での折衷役など、到底一人では捌けはしないだろう。

何やら盛大に勘違いしているが、胡散臭そうな目で見ている。

単なるネタ晴らしをしたが、少し胸を張って得意げに言ってみた。

ミニスカから見える白いものに気付いて、素早くカメラのシャッターを切った！

カメラを撫でながら、悪魔のような笑みをうかべ反省の弁を述べた。今度は、しっかりと目を合わしているが性質が悪い！