一章続きの続き。

「アズ様、おやつの用意が出来ました……お体に問題はありませんか？」
「うん……特には。」
鎌を収め、一つ深呼吸をつく。……思ったより魔力を使ってて大分疲れてるようだ。

「……しかし、思い切った事を言いましたね。」
「ぇと……私的には……その……そこまでのつもりじゃ……」
「でしょうね……まぁ、そこら辺はお嬢様もお解かりになっていますのでご心配無く。」
「うん……」
——やはり、強く言われた事には気が重いのか……さて何と話しかけたものか。

「もう一度言わせていただきます、ご心配無く……お嬢様は無論、私もその程度でアズ様を見損なったりはしません。焦りすぎという点は否めませんが。」
「……」
「お嬢様も頼られて悪い気は無いでしょう、その証拠がソレです……コツは掴めましたか？」
「……もうちょっと」
「何か……思わぬ点が？」
——借り物とは言えお嬢様の力……慎重を重ねなければ。

「ぇと……本当に大丈夫か心配で……ビックリしたの……こんな力強い魔法……初めてだから……巻き込んじゃうじゃないかって……。」
「……心配には及びません。アズ様のコントロールは優秀ですので問題は無いかと。」
——どうやら、まだ問題は無い様だ。

「うん……頑張る。」
「ええ、期待させて貰います。」
「……さて、物騒な話はここまでにしときましょう。焼きたてのクッキーが冷めてしまいますからね……どうぞコチラへ。」

平原の中に不自然にテーブルと椅子が用意されている、特に疑問も無くそれに座る。

「わぁ……この前の？」
「はい、随分と目を輝かせていましたので……及ばずながらご用意させて頂きました。」
「そ、そんなに……？」
「はい、ですが……女性ならば甘味に目を奪われる事は仕方のない事です、決してお恥ずかしい事ではありません、さぁどうぞ。」
手にとって進められたモノを口に入れる、蜂蜜の甘い香りが口に広がる

「いつもと……違う？」
思わずとろけた表情になる。
「砂糖だけというのも……味気ないので少しアレンジを加えさせて頂きました。お気に召したようで何よりです。」
「……こっこれ……もっと……ほしい。」
「おや？アズ様が欲しがるとは珍しいですね？しかし、お嬢様の分が……」
「……お近づき……渡したい……駄目かな？」
「お近づき……ご友人ですか？」
無言で頷く。

「……分かりました、今回は私の分をお持ちになってください。」
「い、いいの？」
「アズ様のご友人と聞いては拒否する理由もありません、なにより……喜ばしいことですから。」
——この世界での王を倒せばきっと私達は離れ離れになるだろう……それを考えれば、友人ができるのであればその関係を優先させるべきだろう。
「……ありがとう。」
「ええ、どういたしまして。良い人に巡り会えましたか？」
「うん……多分。」
「なら、大切にしてあげないといけませんね。はい、包み終わりましたよ。」
小袋を手渡せる。

「数に限りはありますのでご注意くださいませ。これからお出かけになさいますか？」
「ぅん？」
「生物よりは日持ちいたしますが……」
そうか、食べ物だものね。
「も、もいちょっとしたら……いってきます。」
「はい、了解いたしました。怪我の無いようお帰りをお待ちしております。」
食べかけのクッキーを飲み込み転移石を握る。

「あのね……誰かが言ってたの。友達100人作りなさいって……思い出したの。」
「100人ですか？」
——ああ、どこかで聞いたような話。

「出来る……かな？」
「簡単では無いと思いますが、諦めなければ今のアズ様なら出来ますよ。」
——笑顔で見送る。
「うん……頑張る。」

転移石が強く光　意識が途切れる。

「100人分の料理……考えると恐ろしいわね。」

Next...

彼はさも当たり前のように語った。

緊張のあまり去ったことに対して、彼はそう反応した。

どうやって飲むのか？ギミックはまだ内緒のようだ。

どことなく最終確認のように、彼は尋ねた。

　　　一度引っ込み、天臥の肩辺りから顔を出す五色の触手達
　　　天臥の「礼」に合わせてそれぞれがお辞儀をする

　　　ふと、何かに気付いて思案する

　　　天臥の服の袖から白い触手が伸びる
　　　尻餅をついたアズを助け起こそうとしているようだ───

どうやら、エンブリオのような存在はいなかったけれど
ネクターを使わなくても契約を行える存在はたくさんいるよ　といいたい様子

指先を気にして鼻先を近づける。

割と人馴れしているのかも？ドラゴンのクセに。