昨日、赤髪君と共に水辺を案内してもらった少女の事を少し書く。
名をアムルと名乗っていた。

おれ程ではないが非常に小柄な少女で、フードを目深に被っていた。
身成はそれなりに良さそうで、お辞儀の深い礼儀正しい娘さんだ。
何となくその所作は、裕福であった頃の親友の娘と重なった。
いわゆる『良いとこのお嬢』なのだろうかと、そう思う。
……フードの下から覗いて見えた赤い何かが妙に気になったが、黙しておく。

彼女の案内のお陰で、おれ達は道を大きく短縮出来た。
強引な行程だったが故か、行く手を遮る敵は相当数であったが、問題なく捌く。

アムル君の戦い振りはもとより、気になったのは彼女の傍らの妖精であった。
近くで嗅げば鼻が痛くて涙が出て来るような激辛のカレーを浴びせかけられたナイトスピリットの切なそうな顔は、しばらく忘れられないだろう。
……おれがそのナイトスピリットと契約を交わしたのは、別に同情した訳ではないが。

かくして彼女の案内のおかげで、おれ達は巨大なイカと相見えている。
赤髪君の提案でヴェルンカステル君と二人組、果たしてコイツを負かす事が出来るのか。
と言うか、何故小川にイカがいるのか。
ベルフィなる少女はどこから現れたのか。
この少女は何故こんなに激昂している癖にそそくさとおれの背後に隠れようとするのか。
様々な疑問を残したまま、イカの容赦ない触手がおれとヴェル君に襲いかかる！

離れた場所から鴨が騒ぐ鳴き声が