ネクターを独り占めしていた王様と戦って取り戻したネクターの花。
もう皆運び出しているみたいで、ずいぶん数は減っていたけど、まだまだたくさん残ってる。
あたしも持てるだけを持ち出す。ここまで来たのはこの為だったから。

「おじさん！おばさん！」
「おお、ミィちゃん。こいつは……ネクターの花じゃないか！」
「一揆衆が隠し場所を突き止めたとは効いてたが…ウチにも渡るようになったか！」
「ごめんね。遅くなっちゃった…かな？」
「いいのよもう。ミィナちゃんが無事で帰ってきてくれればそれが一番なんだから。」
「そうだそうだ。これでようやく養蜂場も復活だ！」
あたしの目的。ここまで来た理由。
ハチミツが大好きだから。ネクターの花のハチミツを舐めてみたいから。
コレで多分。叶うはず。まだ終わったわけじゃないけど、一区切り付いたような安堵感と、これからの楽しみが混じった気持ちに包まれる。

……

………

（あたしもお手伝いしないとね…）
「ねーえーちゃん！」
「ひゃ!?」
「ねえちゃん、また太った？」
「もう…そんなことないもん…」
後ろから抱きついて来たのはハインツ君。
おじさんの子供で、11歳の男の子。
あたしから見るとすごく年下なんだけど、いつもからかわれてる気がする…
「ネクターの花取り返したんだって？」
「うん。早い人はもっと早く見つけてたみたいだけどね…」
「ねえちゃんどんくさいからなぁ。」
「うっ…」
「でもさ、凄いよ。俺じゃ魔物とかと戦えないしさ…」
「あたしだって、戦った事とか無かったよ。今までやってこれたのが不思議だもの」
「俺と大して歳変わんないのにさ、どうして俺にはできないんだろ。って思うよ。」
「あたし、21歳なんだけど……」
「…マジ？」

……

………

「なあ…ねえちゃんは、これからどうするんだ？」
「？」
「一揆が終わったらさ、どこか行っちゃうのか？」
「…まだ暫くは残る、かな？」
「ホントか!?」
「だって、ハチミツできるまではまだまだかかりそうだし、
あたしもお手伝いしなきゃ。」
「…そっか。そうだよな。ねえちゃんはハチミツ一筋だもんな。」
「……？」