「ここですね」

ドアを開くと、一人の男と、様々な魔法薬の材料が転がっている。
どうやら調材の最中だったらしい。

「約束通り、次は貴方の番ですよ。思いのほか時間が掛かって遅くなってしまいましたがね」

「いつかの白猫か。よくここが解ったな」

「貴方の魔力を覚えたと言った筈ですよ。もっとも、空の上に居るとは予想外でしたけどね。どうやって落とそうと考えていたのですが、あのゴーレムが移動手段を持っていると言うので、余計な労力を使わずに済みましたがね」

調材の手を止めず、白猫の相手をする。
もっとも、途中で作業を止めたりすると、魔力が暴発したり、消失したりするので、切りの良い所まで手は止められないのだが。

「それが貴方の魔法の正体ですか。火炎蜥蜴の牙に人狼の鬣、これは鳳凰の羽ですか。これらを粉末状にし、飴玉に混ぜ、その中で魔力を反射させる事によって威力を何倍にも増していたのですね。なるほど、人間が考えそうな事ですね」

「ラゼルはどうした。姿が見えん様だが」

「おや、心配ですか？あのゴーレムでしたら戻ってくるなり、あちこちに顔を出して遊んでいましたよ。魔力に余裕が出来たからと、無駄に化けたりしてますね」

すり鉢の中に、隣で熱していた液体を少しずつ流し込み、ゆっくりと混ぜていく。

「そうか、お前の知りたがってた俺の魔法の正体も解っただろう。もうここには用はない筈だ」

「忘れましたか？私は貴方の使う術の全てを知ると言ったのですよ。私に知らない事があるなんて、心理の探求者としての名が廃りますからね。それにしても、ここも中々に興味深い所ですね。建物全体から生体反応を感じる所をみると、生きた建造物といった所ですか」

液体を全て注ぎ込み、すり鉢の中の粉末に全て吸収した事を確認すると、空いている瓶の中に移し、蓋をする。

「正直、俺はお前を敵に回したくないし、関わり合いたくもない。そもそも、魔術師と魔法使いが一緒にいる今現在が不自然な状態なんだ」

「あのゴーレムの部屋は私が使います。それと、貴方の持っている魔法薬全てと、調材方法の全てを聞かせて頂きます。後、調材する時は私も立ち会わせて貰います。言いたいことは以上です。それでは後ほど」

言いたい事を一方的に言い終えると、こちらの話を一切聞く気もないという態度でドアから出ていった。

「やれやれ、また厄介な事になった・・最悪だな」

売る気！？