石畳を疾走する黒い影。

それに追いすがるように、小さな翼が忙しなく羽ばたく。

尚も言い募るシャルに再び口を開きかけたが、速度を緩め、完全に立ち止まる。

小竜の口煩さに走ることを諦めたのか、それとも落ち着いて説明したいと思ったからなのか。

そう、敵の本拠地とも言える兵舎のど真ん中で、わざわざ単独行動を取ったのには理由があった。

陰の気を糧とするガルにとって、陽の気はすぐに、というわけではないが害毒になる。

しかし、陽の気の多い、明るい時間帯に活動する人間たちに合わせて行動する以上、陽の気の蓄積を避けることは出来ない。

味方からの攻撃という予想外の事態ではあったが、己の血を媒介として、陽の気を放出するべく、

それなりの量の血を失うほどに負傷する時を、待っていたのである。

そう、懐かしむように虚空を見上げたが、

すぐさま今の状況を思い出し、再び地を蹴る。

併走する竜は苦笑するが、ガルはそれを否定。

>卍人さん

*色々と省略しましたがさらりと言いきりましたとも*

（カーフェイさんまではぐれていたことは知りません。）

＞ご主人

数秒の沈黙の後

そう、少し寂しそうに微笑んだ。