ここ連日、いつにも増して調理に励む主。

数日前より、戦闘によって食料を入手できる機会に恵まれているのだと、主は言っていた。

今日はティシア嬢とエレアナ嬢より、ティータイムにはアップルパイとアップルティーを、と所望されたらしい。

昨日、自分たちに襲い掛かってきたリンゴ男だった物が、目の前で皮を剥かれ、調味料と共に加熱され、フィリングになり、パイ生地に包まれ、オーブンの中で更に焼かれてゆく。

いや、昨日、戦闘が終わった時には、リンゴ男の顔も体も消え、何の変哲も無い、ただのリンゴになっていたので、主はただただ、普通のリンゴをアップルパイにしているだけなのだが。

…抵抗は、無いのだろう。

つまりは慣れている、と。

自分はどうにも食べる気にはなれない。

…今は口が無いどころか翼だけの見なので、食べるという行為すら無縁だが、

今だけは口が無くて良かったと、心から思ってしまった。

はて、食事行為を必要としないのは、主も同じではなかっただろうか。

世界のいたるところに存在する『気』。

その中でも水や地と言った、陰に分類される属性の気、『陰の気』を、主は糧とし、自分はそこから更に、力を分け与えられている。

『気』がある場所でならば、いつでもどこでも糧を得ることが出来るため、経口による食事は必要としないが、

同行者——経口による食事を必要とする種に合わせて、糧を得ている。

しかし今は、それは全て無駄な行為となっている。

同行者たちから隠れて、後で食べる、と？

自分が作ったもので言うのもアレですけどね、と肩をすくめる。

そう、目を細めながら、焼きあがったパイをオーブンから取り出した。

素手で。

…この人は、本当に隠す気があるのだろうか。　何がとは言わないが。

＞カーフェイ君

＞ガル君

＞ティシア君

＞ガルさん
"落ち着け"の言葉に多少声のボリュームが抑えられたが、尚続く謝罪の言葉

ガルさんたちの今までの経緯を聞いて、

*何かを発見して嬉しそうだ*