※　某所某日のロールから、リンクしていたりするかもしれない。




偶然行き着いた店から出たら、

「…あれ？」

見知らぬ風景が広がっていた。

風景だけではない。

風の臭いも、

空の高さも、

傍に生えている木々の葉も、

何一つ、知らないものばかり。

はっと振り返れば、自分が出てきた扉すら無くなっていることに気付く。

360度ぐるりと見渡し、十分すぎるほど異世界を体感したところで

「ここは、どこだ？」

そう首を傾げれば、碧の長い三つ編みが揺れた。




　　　　◇　　　　◇　　　　◇

暑さ寒さも彼岸まで、と、彼の主が言っていた気がする。

『彼岸』が何を指しているかは分からないが、

昼間も随分過ごしやすくなってきた、日本、某所の昼下がり。



「——っ？」

鼻歌交じりにフライパンを振っていたガルが、不意に顔を上げた。

どうかしたのか、と背中に引っ付くと

「あ、いいえ。　…何でもありません。」

きっと空耳でしょう、と再び俯き、調理に戻る。

その背後で、揺れる三つ編みの先端を追い、うにゃうにゃと猫が爪を振る。

しかし、どうにも気になったので、何が聞こえたのか聞けばしばし逡巡のあと

「…兄弟の声が、聞こえた気がしたのです。」

女神の次は兄弟か。

祖竜の兄弟と言うのだから、またとんでもない存在なのだろう。

「ホームシック、なのかもしれませんね。」

何気に失礼な想像をしていることなど露知らず、ガルは苦笑気味に首を傾げる。

元いた世界からの知り合いらしい赤毛の女性——ルーチェの突然の襲来、参戦に驚いたのは数日前のこと。

見知った顔が増えたことによって、故郷を思い出すのも無理も無いのかもしれない。

帰りたいのか、と聞けば

「帰りたくない、といえば嘘になります。」

伏目がちに肩をすくめたが、一拍置き

「ですが、仮にも主に仕えている身。

　多大な恩義を受けておきながら、１人故郷に帰るなど、そんな無責任なこと、できるわけないでしょう？」

心配ではないのか、と問えば、ガルは首を横に振り

「俺１人が抜けたところで、どうにかなるような世界ではありませんから。」

どこか誇らしげに微笑んだ。

が、

「…まぁ、元々帰れないのですけど。」

自嘲気味に、また肩をすくめた。

…ことにより、かすかに揺れた三つ編みの先端。

今度こそそれを捕らえることに成功した猫の爪により、強制的に上を向かされることになるガルだった。

>ガルさん

組んでいた腕を密着させたと同時に、胸にカーフェイの腕が食い込む。拘束とは別の原因で、彼の顔がどんどん赤らんでいく。

＞ティシア＆エレアナ