-epilogue-


SIDE*レイヤ

「ふむ、ようやく見えて来たな。」

「そうだね…なんだか、随分久しぶりだね、兄上。」

「ですねー。」

「…ですねーと言うか、サクラは２度ぐらいしか来た事ないだろう。」

「私ははじめてです！あれが兄上様とユカラのお家なのですね！」

鬱蒼とした森林を抜けた先にある、古びた一軒家。

ジェイド王国にある、久しぶりの我が家だ。


あのあと、セツカとフィーとやらを異空間から回収して自分達も元居た宿屋へと転移した。

セツカからは、ただ一言、全て終わった。

とだけ、聞いた。

あとは、呼び出されていたバレット達も少しの挨拶のあと、消えて行った。

まあ、そもそも俺様達の記憶から呼び出されていたらしいので、本物ではないのだろうが。
それでも、助かった、とだけ声をかけたら柄じゃないこと言うな、と眼鏡に言われてしまった、あの眼鏡め。

そして、宿に戻って兵庫の様子を見に…行こうとしたら真っ先に道産子が

兵庫を揺さぶって

眠そうに起きて来た兵庫に思いっきり抱きついて

そのまま吹っ飛ばされる

までがワンセットだった。うむ、何時も通りだ。

ちゃんと、オリフィアから切り離された兵庫の魂は帰巣本能で元の身体に戻ってきていたらしい。
実際、帰巣本能か誰かの意志なのかはわからんが。

軽く、診察しても特に問題はないようだ。
だが、精密に検査してみないと魂と身体の事だ、わからないこともある。

ので、一応、オリフィアの件も落ち付き、何故か俺様の身体もそれなりに良好ということで一端、ちゃんとした魔術の施設があるジェイド王国に帰還しようということになって今に至る。

兵庫とフィーは魔術ギルドのアカデミーで精密検査。

道産子とセツカは付き添い。

アホ毛もこっちに来たがっていたが、フィーの方の検査に必要と言う事で向こうに付き添っている。

で、空いた時間に俺様の薬のヒント的なレシピが欲しい、とサクラが言いだしたので俺様の家まで取りにきているわけだ。

扉を開けると、ここを出た時のままの、綺麗に整理された部屋がそこにあった。

「…ふむ？もう少し、ほこりや塵などが溜まっててもよさそうなものだが？」

「誰かが掃除してくれてたんでしょうか？」

…多分、眼鏡辺りがジェイド王国から誰か掃除に派遣していたのだろう。
結構、危険物もあるからハラハラものなので今度１度言っておこう。

ユカラは元の自分の部屋で眼をキラキラさせているマグノリアを案内している。

レシピをサクラと話しながらまとめにかかる。

「そういえば、ユカラ君、落ち着いたらウルドと旅に出るって言ってましたね〜。」

「ああ、俺様も聞いている。見識を広めるのはいいことだ。」

アホ毛も一緒というのはちょっとびっくりしたがな。だが、ここを出るまでは俺様にしか懐かなかったユカラが他人にそこまで心を許したのだ。

喜ぶべきことだろう。

「今すぐ、ってことじゃないみたいですけど…まずはレイヤ先生のお身体をなんとかしないと。」

「う、うむ、そうだな。」

心配そうにこちらを見てくるサクラ。
そして、思い出すセツカから聞かされた言葉。

【オルタンシアの呪いはもう解けている】

確かに、魔力を使う時の激痛はなくなり、身体中の倦怠感もなくなった。

一先ず、命の危機はかなり遠のいたとみて良いだろう。

本当なら、サクラに…その、愛の告白をした身としては身体がほぼ復調したことを告げて…その、恋人同士とやらになりたい所存ではある。

だが、ここまで頑張ってくれているサクラの目標を急に奪うのもサクラを導くものとしては気がちょっと引ける。

何より、本当に完調したかどうかはまったくもって自信がない。
寿命だけすり減ってしまっている可能性もあるしな。

ので、サクラの卒業試験はまだ続けることにしている。

「だが、命の危険がすぐにはないようだ。ゆっくりと、とはいかんが慌てずに頑張るがいい。…二人で生きるためにな。」

「は、はい。頑張ります！」

そう、これからもサクラと二人で一緒に生きる為に。

一先ず、ここで最初の物語は終わりを迎えよう。










そういえば、ウルドが旅に出たら誰が兵庫と道産子を日本に帰すんだろうか？


まあ、いいか。